「早くしないと置いてくわよ」
姉が、道の先の方から僕を呼ぶ。
その濃紺のスラリとしたスーツ姿は、とてもついさっきまで僕を犯そうとしていた人と同一人物とは思えないくらい、ビシッと決まっている。
黙ってさえいれば、モデルにも見えるだろう。
さっきから街中ですれ違う男―まれに女も―達が、羨望の視線を送る。
「そ、そんなこと言ったって…こんなの…!」
僕はそんな姉に必死に言い返しながら、今自分が着ている服をつまむ。
白いレース地のブラウスに、桜色でミニのフレアスカート。足元はミュール。どれも姉のお下がりだった。恥かしくて、火が出そうなくらいに頬が熱くなるのを感じる。
だけれども、僕が必死になっているのは、女の子の服装だからというだけじゃない。
今、僕は姉に連れられて買物に来ている。僕用の女の子用品を買うために。
「男物の下着なんて可愛くないから着ちゃダメ」その一言で、家の中にある僕の下着は全て処分され、姉のブラやショーツは、完全にスカスカだった。
つまり、今僕はこの服装の下に、何もつけていない。
だから僕は、下手に動いてスカートがめくれやしないかとか、ブラウスが透けていないかを慎重にチェックしながら歩かなくてはいけなかった。
当然、片手でスカートを抑えつつもう片手で胸の辺りをかばって俯いている僕には、早く歩くなどという事は無理な話だった。
そして、声をあげたことで周囲の視線が、全て自分に向けられたように感じた。一瞬、自分が何も着ていないかのような錯覚に陥いる。
「あ…ぁぁ……」
姉はそれを見透かした上で、意地悪な口調で僕を責める。
「あら。さっきの裸エプロンに比べたら、別に恥かしくないでしょ?それとも、恥かしいのに感じちゃったのかしら?」
指摘されて、僕の体が、びくっと震えた。朝、中途半端に刺激された僕の体は、確かに下半身にじんじんとした痺れが生じていた。それに、胸の頂点が、布地に擦られて膨らんでいる。
めまいのような感覚が生じて、頭の中が、人々の目で埋め尽くされていく。その中心で、裸を見られて感じているいやらしい少女。
また、自分が制御できなくなる。
と。
「ほら、こっちへ来なさい。」
姉が、僕の手を引っ張って、ビルの隙間の奥へと入り込む。昼間でも薄暗い、袋小路だった。多分、誰も通らないだろう。
そこまで考えた時、体が震えた。
「あっ…んんっ」
じんわりと、全身に広がる快感。
姉は、僕を壁に押し付けると、唇を重ねてきた。一瞬の早業だった。動揺した僕は、それに抵抗できない。口の中に、舌が入り込んでくる。
「んむぅ………ん、ん」
姉の舌が動くたびに、柔らかな陶酔感が僕を包む。ぼうっとしてきて、全てをゆだねたくなる感覚。
「…ん…ん…?」
不意に、下腹部に妙な違和感を覚える。
…この感じは…。
ぼんやりした頭で、考えて考えをめぐらせた。
「っ!!」
そして、思いついた。
朝、あの後すぐに出かけることになってしまった為、トイレに入りそこねてしまった。つまり、これは…。男の時とは感覚が微妙に違うけど、間違いはないだろう。
意識した途端、急に尿意が強くなった。さっきまでの陶酔感が、吹っ飛んでいく。
「あら、どうしたの?」
突然に顔を青ざめさせた僕に、姉が唇を離して、言った。
「あ、あの、トイレに…」
「あら、おしっこ?」
「ぁ、うん」
僕は、だんだんと強くなる尿意に、俯いて体を振るわせる。
早く、トイレに行かなくちゃ…。
「ダメよ」
走り出そうとした僕の腕を、姉がつかむ。
「な、なんで!?」
「今から行っても、間に合わないわよ。ここでしなさい」
「そんなっ!嫌だよっ!」
「ふぅん。でも、男の子の時は平気だったでしょ?」
確かに、男の時なら道端でしたこともある。でも、今この姿で、しかも姉の見ている前でなんて。
「じゃあ、無理やりにでも出させてあげる」
また、強引に壁に押し付けられた。少しでも変に力が入ると、漏れてしまうかもしれない。そう考えると、抵抗できなかった。
「んんんぁっ!…やめ、ひぃんっ・あぁ…」
股間の、特に尿道の周辺や尖りを、姉の指が蹂躙する。
「も、もれちゃ‐んっぁぁっ…やだぁ」
我慢しようとすればするほど、意識がそこに集中して、ますます刺激が強く感じてしまう。
「ほら。すっきりしちゃいなさい」
酷薄な微笑み。
激しい快感とともに、膀胱の辺りが少しずつ押し込まれる。
「ひゃ、ぁ、ぁぁ、も、ぁめぇ、っ!」
ちょろ。
苦しさと快感がないまぜになった、ほとんどパニックになっている状態で、ほんの少し、漏れてしまった。あわてて、止めようとする。
「ふふふふふ。もう、ダメね。せっかくだから、漏らしながらイきなさい」
「ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ」
指が、激しく踊る。
もう、我慢の限界だった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ…も、もれちゃ、ぁ…っ…っ」
姉は、限界を察したらしく、僕の花芯を強く弾いて、素早く下がる。
そして、我慢が終わった。
…………………。
とても聞くに堪えない、恥かしい水音が耳を叩く。
剥き出しの足が、跳ねた雫で濡れていく。異常に高められた感覚は、それすらも快感と感じてしまう。
「ひんっ…嫌…いやぁぁぁぁっ……っ!!」
そして、それと同時に絶頂に達した僕は、力が入らなくなって、その場に倒れそうになった所を姉に抱きとめられた。
「可愛かったわよ、祐ちゃん」
姉が、とても楽しそうにささやいた。