台所と食卓兼居間は間続きになっている。いわゆるダイニングキッチン、ごく一般的な造りだ。
本来の居間も食堂も別にあるのだが、家族が三人だけになってから使われることはほとんど無くなった。
「遅い! とっくに用意は出来てる――って何よ? その格好」
「ふふっ、可愛いでしょう? 心ちゃんに似合うと思って――」
「誰が心の話をしてますか!! なんで恋姉がハダカなの、着替え持ってっただけの人がどうして―」
「あら、バスタオル着けてるわよ?」
「そういう事を言ってんじゃないでしょうが‥‥。とにかく説明して――」
「…僕が…お風呂で‥‥その、倒れちゃって」
愛の表情が真剣なものになる。
「それで?平気?」
「うん」
「そう……。さて、この話の続きは後でゆっくりしてもらうとして。
お昼にしよ――恋姉はとっとと服着てくる!!」
「はいはい」
「心おいで、恋姉が戻るまでに手当て終らせちゃおう」
「大丈夫だよ。これくらい」
「大丈夫なわけないでしょうが、あんた肌弱いんだから。あーあ、真っ赤に腫れちゃって。
痕残ったらどうする気?」
居間のソファーに座らせられる。
「いいよ、自分でやるから‥‥」
「つべこべ言わない」
肌に刺激を与えぬようガーゼを当て、その上から湿布、手早く包帯を巻く。
あっという間に左膝から下が包帯に覆われていく。
「大げさだよ――」
つい声に出てしまう。
「何いってんの、けっこう酷い打撲だよ。
まったく、父さんも、か弱い末娘に殴り合いの真似事教えるなんて………何考えてたんだか」
右足に包帯を巻きつつ、独り言のように呟く。
(親父か‥‥一発でいい、打ん殴ってやりてェな)
心が己を鍛えた理由の一つ。いや、当初の目的だった。
その目的は果たされることなく、父は死んだ。
いま心が己を鍛える理由はもっと別のものだ。
当面の目標はしかるべき時が来るまで家族を、つまりは恋と愛を守ることだった。
これまで守ってきたつもりであった妹に手当てされている、初めてのことだ。
しかもいま相手はこちらを『妹』と認識し、自分は心配される側になっている。
なんとも妙な気分だ。
「はい、終わり」
言葉に重なるように、唇に触れるだけの軽いキス。
(またかよ!‥‥スキンシップ過多だよな―――)
「おやおやぁ?ホッペも真っ赤になっちゃって、こっちも手当てが必要かなぁ?」
ふにふにと頬をつついてくる。
「やめ――」
ソファに押し倒された。顔の横あたりに手をついて逃げ道を塞いでくる。
片手で器用に心の胸元のボタンをはずし、手を差し入れてくる。
「冗談やめてよ・・・・・・愛‥姉ちゃん」
手足をばたつかせて抵抗するが、簡単に押さえられてしまう。
手足をばたつかせて抵抗するが、簡単に押さえられてしまう。
(クソ!!今の僕は……単純な力じゃ愛にすら敵わないのか――)
さすがに『本気』で抵抗すればどうにか出来るだろうが‥‥愛を傷つけてしまうかもしれない。
愛はクスリと笑い、下着の上から乳房に触れてくる。
「……あっ!少し成長したんじゃない? それに、相変わらずやわらかいわねぇ――
こんなに細いのに、なんで?」
(知るかよ!! 勘弁してくれ……)
「――んっ…‥んん」
声を殺して耐える。
「ま、手当てのお礼だと思って、我慢なさい」
ブラの下に手をすべり込ませ、乳首を摘んでくる。
「―うゆっ?! ひぅ‥」
耐え切れず、声が出てしまう。
「ふふっ、本当に敏感ねぇ。一生懸命がまんして……ほんとの本気でやったら、
私に怪我させちゃうと思ってるでしょ?
だから……。生真面目で優しくって、まったく悪戯しがいあるなぁ」
しつこく乳首をいじりながら、やさしく胸を揉む。首筋に顔を寄せ、何度もキスする。
「ミルクの香りがする――赤ちゃんみたい」
ふたたび唇に、今度は舌をすべり込ませ、心の舌にからませる。
唾液の交換でもするように、心の口内のいたるところを刺激してくる。
離れぎわに下唇を甘噛みしていく、ちゅぴんと音がした。
「ごちそうさま。あんまり虐めて、嫌われちゃうとイヤだからね。このへんにしといてあげる」
(‥‥助かった)