「んんふ・・・んふぅ・・・・ん・・・ん。ん・・・・んぁ・・・ぁあん」
歯を食い縛り、堪える。
ほんの数秒で下半身に血液が集まりだす。
クリトリスが充血して、包皮からわずかに顔を覗かせる。
男の勃起とは異なる感覚。
剥き出しにされたそれは更に強い刺激を生む。
(早く・・・・・シャワーを・・・・)
だが、遅かった。もう腕に力が入らない。
それなのに、指が強張ってキュッと握り締めたまま離せない。
膝からも力が徐々に抜けていく。
なんとか体勢を変えようと足掻き、バランスを崩してへたり込んだ。
それが更に状況を悪化させてしまう。
シャワーヘッドに跨って座る格好で、股間に密着する状態になってしまった。
水流が容赦なく、ラビアを、クリトリスを弄る。
「ぁん・・・・ああん・・・・・ぁあぁ・・・・・はぁん」
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・・こんなことで・・・・負けるものか・・・・・)
このまま快楽に溺れ流されるという事は、女の自分に負けることだ。
自分自身に負けることなど許せる訳がない。
この矜持だけは守り抜く。たとえどんな時でも、何があろうとも。
なんとかシャワーを抜き取ろうと試みる。
小刻みに揺り動かし、擦り付けるかたちになって、
刺激がより強まっていることに、もう気が付けなくなっていた・・・・・
「んふぅ・・・・ぁあ・・・・ぅん・・・・・はぁん・・・・い・・・ゃぁ・・・ん」
いつの間にか涙が溢れている。
悔し涙なのか、それとも別のモノなのかは分らない。
身体が何かに反応して、機械的に止め処なく溢れ続ける。
(・・・・来る)
唐突に、そう確信する。
頭の奥底で一つの黒い点が生まれる。
点は半紙に墨汁が染み込むように徐々に広がっていく。
やがて、闇がぽっかりと口を開けた。
闇が生き物のように蠢く。
身体が砂の様な細かい粒子になってサラサラ崩れ出し、
少しづつその闇に吸い込まれていくような感覚。
吸い込まれるほどに、快感はますます強くなっていく。
しかし同時に、快感の『頂点』が引き上げられる。
絶頂に達することが出来ない。
唯々、嬲られ続けるままに快楽を甘受するしかない。
「・・〜〜っ・・・・・〜・・・〜〜ッ〜・・・・〜〜・・・」
声にならない吐息がもれる。
身体を支えきれなくなり、仰向けに倒れた。
体勢が変わり、やっと責苦から開放される。
闇が、名残を惜しむ様に、ゆっくりと還っていく。
どれくらい経ったのだろう。
心は未だ立ち上がることが出来ない。
(なんて体たらくだ・・・・・なさけねぇ・・・・・・気持ち良くて
おかしくなっちまってた。ほんとに女みたいに喚いて・・・・・)
これほど惨めな負けは初めてだ。
いつ、どこであろうと己自身に恥じるような真似はすまいと
こころに決めてきた。
これを守ってきたという自負もあった。
それなのに・・・・その屈辱を最初に与えた相手が紛れもない自分自身・・・・・。
身を守るのに止む無く卑怯な真似をした場合等とは訳が違う。
涙が止まらない、これは・・・・・・悔し涙だ。
「心ちゃーん、お着替え持ってきたわよぉ」
(姉さん・・・返事を・・・)
「心ちゃん? どうかしたの? ねえ、心ちゃん? 」
「・・・・は・・・ぃ・・・」
「心ちゃん? 開けるわよ? いい?」
引戸を開け、恋が風呂場に入ってくる。
「心ちゃん!! 大丈夫?!」
「ぅ・・・ぁ・・・いじょ・・・ぶ」
心に駆け寄り、そっと抱き上げる。
「ぁ・・・お姉ちゃ・・。濡・・・れ・・・ゃ・・・ぅ」
心の言葉を、そっと唇でふさぐ。
「気にしないで良いの。平気よ」
言いつつシャワーを手に取り、心の身体に残る泡を丁寧に流し始めた。