28

「そういえば、女子トイレってほんとに汚いんだね……驚いたよ」
「どこ使ったの?」
「図書館に行く途中だったから、C館の一階。それと、図書館の一階」
「図書館は、わりとまともだったでしょ?」
「うん、そうだね」
「一番きれいなのは、A館ね。あそこは研究室だから」
「あ、そうか。男といっしょだね。でも、遠いよ……清十郎待ってるし」
「平気よ。ちょっとくらい待たせたって――行こ?」
 透子は心の手をとり、ずんずん進んでいく。
 目的地のトイレには、誰もいなかった。
「わあ。ほんとに綺麗だ……」
「でしょ?」
 少し切羽詰っていたこともあり、心は後ろも見ずに個室へ急ぐ。
「――わ?!」
 トン、と。ごく軽く、背後から押された。かちゃりという施錠の音。
 振り向くと、透子が後ろ手にドアを閉めた格好で、微笑んでいる。
「透子ちゃん? なに? 冗談やめてよ……」
 口に人差指を当てて、透子は心の肩を掴んだ。
「静かにしないと、誰かに聞かれちゃうよ? それに急がなくて、いいの?」
「はやく、出て行ってよ…」
「イヤ」
 悪戯っぽい笑顔を張り付かせ、即答する。
「怒るよ?」
「ふふ、どうぞ。あなたにそれができるなら、ね」
「……」
 いまの心には透子を傷付けずに、ここから出て行ってもらうことはまずできまい。
 単純に体力を比べたら、透子の方が明らかに上なのだ。
 そうなると、かなり『本気』で抵抗するしか方法がない。
 だが、心は女の子を殴れない。いや、殴らない。男として当然の、大事なこだわりの一つだ。
 それだけではない。今はそれがこれまで以上に大きな、新たな意味を持っている。
 女の子に手をあげたら、自分が女だと認めたことになる、心はそんな気がしている。
 だから余計に、どうすることもできない。
「なにが、したいの?」
「別に何もしないわ……ただね、ほんとに女の子になってるのか、興味があるの」
 嘘だ。
 透子は一目みた瞬間から、心が女の子だと分かっている。そのことは確信できた。 
 だから、確かめる必要など、ない。
 本当はもう一つ、別に確かめたいことがあるのだ。
 いまの心を見たとき、女の子であることの他にもう一つ、透子には確信できたことがある。
 それは自分と比べたとき、心の方が明らかに、女としての『魅力』は数段まさっているということだ。
 小柄で子供っぽいところがあるとはいえ、誰が見ても明らかに綺麗で整った外見。
 さらに心は、女の子になったばかりなためか、とても隙が多い。
 これは先ほどから、ずっと試して分かっている。ことある毎にベタベタしたのはそのためだ。
 もっとも、そうでなくとも妹は本当に欲しかったから、途中からは普通に楽しんでいたのだが……
 可愛くて、無用心で――とにかく今の心は『美味しい』。いや、美味し過ぎる。
 この子を目の前に、男共が、特に『あの』清十郎が何もしないでいられるわけがない。
 聞けば、午前中からずっと一緒にいたというではないか。
 だから、確かめさせてもらう。
 女になったばかりなら、それは『生まれたて』ということだろう。
 本来なら、間違いなく処女のはず。そう、なにもなければ……
{あなたは、悪くない。あなたが『そんな子』じゃないのは『分かる』、男なんだもの。でも……}
 心の身体は女の子で、相手は清十郎だ。
 清十郎も、よほど『信用』されているものとみえる。
「興味があるって、どうするの……」
「ちょっとだけ、ちょっとだけよ。見せて欲しいの、あなたの身体」
 心ははやくも真っ赤になっている。
「い、いやだよ! そんなのダメだよ。おかしいよ!」
「ほらほら、声が大きいよ? それに女の子同士だよ? そんなに恥ずかしがらなくても、いいじゃない」
{――可愛い。ほんとすっごく可愛い。これじゃ、我慢できるわけないじゃない……}
 言葉をかけつつも、透子は心に抱きついて、身体をさすってやる。
 さっきから何度も試したとおり、とてもやわらかい。それにサイズが手頃で、扱い易い。
「ねえ……やめてよ。お願いだよ」
(どうして? 清十郎だけじゃなく、透子ちゃんまで……)
 いくら『似たもの』カップルとはいえ、こんなところまで同じとは思わなかった。
「大丈夫。いたずらなんか、しないから。心ちゃん、いえ、今は心くんって呼んであげる。
あなたが本当に女の子の身体なのか、それを確かめるだけ――それにはやくしないと、お漏らししちゃうよ? いつまでも我慢できないでしょ? 分かってるんだから……」
 女性の身体は、男性より失禁の可能性が高い。その構造上、無理もないことだ。
「う……本当に、なんにもしない?」
「約束します。お姉ちゃんは、うそつかないわ。心ちゃん――」
 言いつつ、心のバッグを外してドアのフックにかけ、次いでベルトを外している。
 さらに、レザーパンツに手をかけた。
「自分でやるよ。触らないで」
 透子の手を払いのける。せめてもの抵抗だった。
 レザーパンツを脱いで、下着姿になる。
「もう、いいよね? コレ見れば、分かるよね?」
{何? この甘い香り…心ちゃんの……?}
「なんのこと?」
 シレっと、透子はとぼける。下着姿で、心が女なのは分かりきっているのに。
「さあ、脱ぎ脱ぎしましょうね……」
「いやだ! 触るな!!」
 抵抗する間もなく、下着を引き下ろされた。
「あら、可愛い」
{キレイ……良い香り}
「みるなよ! みないで! みないでよ……」
 無力な自分が情けないのか、心の目にはもう涙がいっぱいに溜まって、今にもこぼれそうだ。
「泣かないで、はやく、済ませちゃいましょうね?」
 心を抱いて座らせると、膝に手をかけて肢を開かせようとする。
「やっ! や、やだ……やめてよぉ」
 力ずくで簡単に開かされてしまう。
 大股開きにされたせいで、割れ目からほんの少しだけ、ピンク色が顔をのぞかせている。
 白い太ももと、その桃色のコントラストが非常に美しい。
「綺麗……ちょっとだけ、生えてるのね。かわいい」
{もうじゅうぶんに、女の身体……}
「触るな! もういいだろ、止めろ!」
 心は涙をこらえつつ、可愛らしい声をむりやり荒げて乱暴な口調でいう。
 必死で男らしく振舞おうとしているのだ。
 しかし元より中性的な口調で、そのうえ身体に侵食されているせいもあって、だいぶ無理がある。
 迫力の欠片もない。これでは小学生とて、怖がらせることはできまい。
「女の子が乱暴な言葉を使っちゃダメよ? それに、おしっこしないの?」
「ボクは男だ! …見られてたら……できないよ…」
 効果なしと見てはやくも諦めたか、それとも続けられないのか、心はいつもの口調に戻る。
「そんなこといって、無理な我慢は良くないわ――」
「ひゃ!? や、いや、いやぁ! ダメだよ、ダメ、ダメ、ダメぇ!」
 透子の指先がぴたりと、正確に心のクリトリスに当てられる。
{やわらかい――気持ちいい、触ってるだけなのに、気持ちいい}
 そのまま、うにゅうにゅと弄くりまわしてくる。
「うあ、あ、ふあ……やだ、やだぁ……だ、ダメぇ、ダメぇえ!!」
 敏感すぎる部分だけを、にゅくにゅくと弄られる。
 しつこい愛撫が一点に集中しているせいで、すぐに心の身体は快感を引き出されてしまう。
 何よりつい先ほどまで、清十郎の激しい愛撫にさらされていた身体なのだ。
「ふーん、なぁるほど……敏感なのね、心ちゃんは」
{こんなに感じやすいなんて……ひょっとして、もう……}
 ますます、はやく確かめねばと思った透子は、少々乱暴な手段にでる。
 指先を割れ目に潜り込ますようにして、心のクリトリスを摘む。
 そのまま少しだけ力を入れて、軽くひねる。
「ふぁあ! あ、あ、やめ…ひゃ、はぅ! ふぁ……ひ、ひぅ?!」
 不慣れながらもそこは女同士だ。絶妙な力加減で、捏ねくりまわすように愛撫を続ける。
 強い刺激が心の身体を貫く。手足の自由がきかない。
(ダメ、ダメ……我慢、我慢す…る…ん、んんあ、うああ!!)
 全身がびくびくと痙攣する。力が抜ける。もう、我慢できない。
 ――ぷしゃ、ちょろろろ、ちょろちょろ――と、可愛らしい水音が響く。
「いやぁ! ダメぇ、みるな、みるなぁ! いやだぁああ!!」
 心は目を見開いたまま硬直し、小刻みに震えている。
 そのようすを、透子はうっとりと見つめている。
{可愛い。こんなに、こんなに可愛いなんて……女の子が、こんなに愛しいなんて、初めて……}
 透子は少女趣味どころか、同性に対して特別な感情、恋愛感情など抱いたことはない。
 心を可愛いと感じたことにしても、年下の少女に対する純粋な庇護欲求だった。
 妹が欲しかったという彼女の言葉に、嘘はなかったのだ。
 それなのにいま、透子はこれまで感じたことのない、特別な愛しさを心に感じている。
 無力で無抵抗な心を『いじめ』て、言い様の無い喜びに包まれている。
「心ちゃん……キレイキレイしましょうねぇ」
 幼児に対するような口調で、透子はやさしく呼びかける。
 トイレットペーパーを手に取り、放心したままの心の股間に押し当てようとする。
「ひ?! さわるなぁ! いや、やめ…ダメぇ……さわらないでぇ……」
 ろくに力も入らず、ふにゃふにゃになっている心に、抵抗などできようはずもない。
 やさしくふれるように紙を押し当て、透子はとりあえず表面の雫を拭う。
「んぁ、んん……」
 表面が綺麗になると、割れ目に指を食い込ますように拭いていく。
「はい、キレイになりました」
 心を抱き締めると、透子は耳元で囁く。
「ごめんなさい。泣かないで、お願い。どうしても、調べておきたいことがあるの」
「いや、いやぁ……いやだよ、さわっちゃいやぁ……やだ、やだ、やだぁ」
 心の涙をぺろりと舐め取り、そのまま唇を重ねる。
「むぅ…ん、ん、んん……」
 声を出させないための強引なキスに、心はなされるがままだ。
 透子の指先が、『お花』へと伸ばされる。
 軽く割れ目に潜り込ませるようにして、薄桃色の蕾を摘む。
 ほんの少し力を籠めて、くりくりとやさしく弄り出す。
「ん! ん、ん……んっん、んん! んふ…んー! んん、んぅう……」
 口を塞がれて抗議することも、悲鳴を上げることすら許されず、ただただ蹂躙されるままの心。
 透子には重ねた唇を伝って、その荒い吐息が、悲鳴がはっきりと感じられる。
 舌の自由すら奪い取るように、自らの舌をそれに絡みつかせる。
「んぐっ?! ……んむ、んん、ん、ん……んぅう、んー! ん、んっ、んんうー!!」
 土手の方に向かって押し込むように、柔肉をひっぱり上げるようにしてゆく。
 皮膚が引っ張られて、クリトリスが完全に根本まで内皮から剥き出される。
 空気すら痛みと感じるほど敏感なそれを、細心の注意を払って指先で転がし、擦り、弄りまわす。
「んむぅ、ん、んん……ぷぁっ! やめてぇ…やだよぉ、もう、やめ……んんぅ! んー、んんー!」
 わざと一瞬だけ口を離してやり、可愛らしい声を聞いてみる。
 背筋がぞくぞくするような興奮を、透子は覚えた。ふたたび強引に心の頭を抱え込んで、唇を奪う。
 小動物のように口中を逃げ惑う、小さな柔らかい舌を追い詰め、自らの舌で絡めとる。
 口中を滅茶苦茶にかき回されて心が分泌した唾液を、貪るように飲み下す。
{おいしい……甘い、甘いわ。こんなに気持ちイイの、おいしいキス、初めて……}
 お返しとばかりに、自らの唾液を大量に心の口へと注ぎ込む。
 心は飲み込みきれず、激しくむせてしまう。そんな様子が可愛くて仕方ない。
{ごめんね。心ちゃん、ごめんね。ちょっとひどかったね}
 女同士でこんなことをするのは初めてだ。だが、透子は嫌悪感などまるで感じていない。
 むしろ侵し難いものを穢すような、背徳感と罪悪感がなお一層に彼女の興奮を誘う。
 このままでは当初の目的を忘れてしまいそうだ。
 一瞬、それでも良いかと、そんな風にすら考えてしまう。
 だがそれでは単なる悪戯になってしまうし、心があまりに気の毒だと、考えを改める。
「むうう……むぐぅ! んん、んむ…ん、んぅ……んんっ、んー! んんぅー!!」
 クリトリスを弄りながら、指先を伸ばして割れ目にそっと触れた。
 くちゅり、という音。間違いない、この感触は――湿っている。心は濡れているのだ。
 指先を確認すると、透明な液体が糸を引いている。
{これで、間違いないわね。完璧に、女の子なんだ――あ、ああ、あれ?! なに? これ……?}
 透子のこころを甘い喜びが満たす。
 心が女の子になって良かったと、それを嬉しいと感じてしまう自分が、そこにいた。
 これまで知らなかった、もう一人の自分に出会えた――そんな気すらしてくる。
 透子は唇を離してやると、心の顔を自らの胸に埋めるように抱きかかえる。
「心ちゃ〜ん? お姉ちゃんが、女の子の身体のこと、色々おしえてあげる」
「やめて……やめてよ、透子ちゃん。やめて……」
 紅潮した頬を涙で濡らし、息も絶え絶えになりながら、心は必死で現状を打破する方法を考えている。
 心がイヤイヤをするせいで、胸にぐりぐりと顔が押し付けられる感触に陶然としつつ、
「駄目ですよ〜? 透子お姉ちゃんでしょう?」
 透子はさらにグイグイと胸を押し付ける。
「ん〜、もし、透子お姉ちゃんって呼んでくれたら、止めてあげようかな?」
「本当? 本当に?」
「ええ」
「……透子お姉ちゃん。もう、やめて…ください。いたずら、しないで……」
「はい、よく言えたわね。えらいわ――ご褒美ですよ」
「――っあん! いやっ、いやぁ! うそつきぃ……」
 ぬちゅり、ぬちゅりと音を立てて、ゆっくりと何度も心の割れ目を撫で上げる。
 レールを滑らすように表面だけを擦って、透子はそのぬるぬるした感触を愉しんでいる。
「心ちゃん、こんなにぬるぬる。気持ちイイ?」
「うそつきぃ。いたずら…やめるって……いった、くせにぃ」
「だからこれは、ご・ほ・う・び♪」
 花びらや、それに囲まれた入り口を、しつこく撫で回し続ける。
{もう、いいかな? これくらいなら、処女でも調べて痛くないはず、よね?}
「やめてぇ……ずるいよ。ずるい、お姉ちゃん、ずるいよぉ……」
「ずるい? どうして?」
「だってぇ、女の子同士なの…に、ボクばっかり、いたずら……されて、ほんとにおしえて……
くれるなら、ボクにも…お姉ちゃんのを触らせて、見せてよ」
「――いいわ」
 即答される。
「え……」
 予想外の答えに、心の方が動揺してしまう。
 心にとっては最後の、苦肉の策だったというのに、透子はあっさりと承諾してしまった。
 いかに現在の身体が女の子であろうと、本来の彼は男だ。さらに透子にとっては恋人の親友だ。
 その心に自分の肌を晒せと要求されたら、普通ならば『目を覚ます』だろう。
 相手が男であることを思い出して、興を削がれ、嫌悪するに違いないと心は踏んだのだ。
 幼く『戻って』しまった心が、それでも懸命に考えた策だった。
 それなのに、透子は動じる素振りさえ見せない。
「心ちゃんは下だから、私も下ね」
 透子は自らジーンズを脱いでいく。生々しい、大人の女の匂いが漂ってくる。
 シンプルな水色の下着。その股間には、すでに染みができていた。
 心どころではない、彼女のほうこそ、もうすっかり『準備』が整っていたわけだ。
「いやだぁ、私ったら……ジーンズまで汚れなくて、よかった」
 少しだけ恥ずかしそうにしているが、それは肌を晒すこと自体に感じているわけではないようだ。
「だ、だめだよ! 透子ちゃん、いけないよ。清十郎に、清十郎に……」
「平気よ、ばれなきゃいいんだから。第一、女同士だもの――それから、お姉ちゃん、でしょ?」
 妖艶な笑みを浮かべて、下着を引き下ろしていく。
 座っている心の目線より少し低いところに、透子のすべてが晒された。
 心よりは濃いが、平均と比べればかなり薄めの陰毛があらわになっている。
 熟れきった割れ目と下着との間に、愛液が糸を引いている。
 外見的には多少、幼い雰囲気があるとはいえ、透子は成人した大人の女性なのだ。
 年齢相応の色気と健康的な『いやらしさ』がそこから溢れている。
 心とて男だ。たとえ彼女が好みとは違うとはいっても、そそられずにはいられない。
 透子はジーンズと下着を完全に脱いで、心のバッグにかけてしまう。
「どう? 私のはどうかなぁ? …心ちゃんのほど、キレイじゃないけど……」
「……キレイだよ。とっても、きれい」
 直視するのをはばかって、ちろちろと横目で眺めつつ、心は答える。
「うれしい。でも……もっと、もっとちゃんと見て」
 透子は両足を開き、腰を反らせる。片手の指先で、割れ目を拡げて『お花』を見せ付けてくる。
 ぱっくりと開いた花びらが愛液でぬめり、てらてらと輝いて見える。
 赤みの強い、鮮やかなピンク色。清十郎が惚れ込んでいるのが肯ける美しさだ。
「……ねえ、触って」
 さらに透子は心の片手をとり、自らの指をそえて胎内へと導く。
 ぬちゅぬちゅ、ぬめぬめした感触が心地良い。
「…あ、ん、んん……ねえ? どう? どう? 動かして、いじって、心ちゃん……」
 彼女は自分の指ごと心のそれを動かして、胎内をかき回そうとする。
「知らないから……いけないのは、お姉ちゃんだよ。知らないからね!」
 心はついに堪えきれなくなってしまう。
 細く長いその指で、透子の胎内をゆっくりとかき回しはじめる。
「あ、あん……あはぁ♪ ふふ、ふふふ……上手よ、心ちゃんとっても上手。気持ちイイ……」
 うれしそうな笑顔をみせて、透子は心の唇を奪う。
 今度は心も責められてばかりではない。お互いに舌を絡めあい、口中を愛撫しあう。
 透子の手が伸びて、ふたたび心の『お花』に触れてくる。
 やさしく花びらを摘んで、開いたり閉じたりしてくる。
 心も負けじと、空いた片手で透子のクリトリスを摘み、くにくにと弄りまわす。
 お互いの唾液を混ぜ合わせて啜り、飲み下しあいながら、競争でもするように愛撫を続ける。
 二人の吐息はどんどん荒くなってゆくが、声を出したら負けだとでもいうのか、黙々と舌を絡め合う。
「「――んむっ…っぷあぁ!!」」
 ようやく二人は唇を離すと、ちろちろと舌先だけ絡めて、しばらく愛撫の手を休める。
「それじゃ、いっぱい教えてあげる。時間がないから、手短にね……」
 透子は心を立たせると、トイレのカヴァーを下ろして自らが座り、膝上に心を抱える。
 まず自分が両足を大きく開いてみせ、心にも目顔でそれを示す。
 恥じらいながら肢を開く姿にそそられたのか、心の口元や頬にキスをする。
 うっとりと見つめあい、抱き締めあう二人。
「いいかしら? まずここ、このぴらぴらしたのは、なあに?」
 本当にすべて説明しようというのか、透子は見て分かり易い部位から、自分の身体で示す。
 既にかなり『戻って』いる心は、自らの記憶を引き出すことも困難になってきていた。
「……んーと、花びら…?」
 もじもじしながら心は答える。その可愛らしい答えに、透子は満足げな笑みを浮かべる。
 彼女はなんとなくだが、心が女の子になってから『幼い』ことに気が付いていた。
 おそらく今の、15歳の――外見はもっと幼い――身体に、引っ張られているのだろうと解釈する。
「ここはね、小陰唇っていうの。ほら、全体がお口みたいだから、唇に例えてるの」
「……お口? 下のお口? 『お花』じゃ、ないの?」
「あら! 素敵ね、『お花』……誰が、そうやって教えてくれたの?」
 よもや清十郎ではあるまいかと、透子は訊ねる。
 ちょうどその、小陰唇をくちゅくちゅと弄くり回して、はやく答えるように態度でうながす。
「ん、んぅう…あ…お姉ちゃんと、…お姉ちゃんと……」
「お姉ちゃんって……恋さん?」
 透子は直接に面識こそないが、恋のことは知っている。ちなみに愛とは顔見知りだった。
 ――果たして現在の愛が、透子のことを覚えているのかどうかは疑問だが――
 こくこくと肯く心に、とりあえずは納得する。
「ほぉら……お姉ちゃんの花びら、触って、いじってみて」
「あは♪ 花びら、花びら、キレイキレイ」
 歌うように呟きながら、心は透子の小陰唇を弄りだす。
 うにうに、くにゅくにゅと楽しそうに弄る姿には、後ろめたさがまるで感じられない。
 そんな玩具で遊ぶ子供のような純粋さが、なおさらに透子の興奮を誘う。
 心の『お花』を撫でる速度を上げて、くちゅくちゅと、指先を小刻みに震わせるようにする。
 愛液が泡立ち、かすかに濁ってねばついた糸を引きだす。
「んぅ、うう、あん……ダメぇ、お姉…ちゃん」
 透子の愛撫が激しくなって、心は花びらを弄るどころではなくなってしまう。
 ぬるりと、心の指先が透子の胎内に侵入する。
「ああん! あんっ、あぁん、ん、いいわ……上手よ、心ちゃん…」
 反撃に出たわけではない、単に手元が狂っただけだが、それが透子を喜ばせる。
「次はここ、これはなあに?」
「ふぁあ! あ、ぁあ、いやぁ……ダメェ」
 心のクリトリスを軽く摘んで示す。
「ねえ、ねえ、心ちゃん? ここは? ここは何?」
 くにゅくにゅと弄りまわしながら、ねちねちと質問を続ける。
「わかんない、わかんないよぉ……」
 いやいやをしながら答える心。その膣口から、こぽりと愛液が溢れる。
 何かすがるものが欲しいのだろう。無我夢中で指先を動かし、透子の胎内を乱暴にかき回す。
「はぁっ! …ん、ふぁあ…ん…心ちゃんは、悪戯っ子ねえ……ここは、クリトリスっていうの」
 女としての経験の差だろう。透子は愉しみながらも、冷静に心を追い詰めていく。
「さあ、クリトリスって、いってみて?」
「いやぁ…やだ、やだよぉ。違うもん、違うもん……ちんちん、だよ」
 透子はさらに力を籠め、少しだけ乱暴にクリトリスをねじり上げる。
「ぴぅう!! い…いやぁあ!」
「それは、男の子のでしょう? 心ちゃんのは、女の子よ?」
「いや、いや、いやぁ……ボク、ボクは…」
 あくまで自分は男だと、そう言いたいのだ。
{心ちゃん、可哀想……でも、でも、可愛い、可愛いわ}
「お姉さんは、恋さんは、何ておしえてくれたの?」
 少し気の毒だと感じて、透子は助け船をだす。だがそれでも決して、心を責める手は休めない。
 くにくに、うにゅうにゅと、クリトリスを弄り続ける。
「ん、んん……つ、蕾…蕾ぃ」
「そう、蕾ね……心ちゃんのは、きれいな蕾よ。とってもきれい」
 そんな伏字を使ってまで、今の心に相応しく、可愛らしい『教育』が為されていることを直感する。
 同時に、このように素敵な『心』の、姉という立場にある恋が羨ましい、妬ましいと感じる。
{こんなに可愛い妹……いいな、私も欲しいな――でも}
 もし本当の姉妹ならば、『こんな事』はできまい。そう思うと少しだけ気が晴れた。
 先ほどから透子は、心の『お花』の表面をしつこく弄るばかりで、まだ胎内には一切ふれていない。
 女同士ですること自体が初めてだったから、少しだけ躊躇していたのだ。
 しかしここまで試して、女同士のコツはかなり掴めてきた。
 要するに普段、清十郎にされていることをしてやればいいのだ。
{あいつ……普段はこんな風に、うまいこと浮気してたのね……}
 改めて自分の恋人の『上手さ』が分かり、透子は彼を見直すと共にちょっぴり複雑な気分だ。
 だが、おかげで心と楽しめたのだ。それでちょっと、清十郎めザマーミロとも思う。
 当初の目的は、心が処女か否かを確かめること。さらにもう、時間もない。
 今なら心に抵抗されることもなさそうだし、丁度いい頃合いだろう。
 いよいよ実際に確かめることにする。
 とはいえ、まだ指で探るのは不安だ。心が処女だった時、傷でもつけたら取り返しがつかない。
 そうなるとやはり、この方法が良いだろう……
「心ちゃんは、少しお疲れみたいね。 だからはやく、さっと教えてあげる、ね? ん――」
 もはや力なく、時おりぴくぴくと動くだけの心の指を、自らの胎内から引き抜く。
 透明な液体が糸を引く。その手を、心の口元に近づけてやる。
「どう? お姉ちゃんのは、おいしい?」
「うん」
 手についた愛液を、ぺろぺろと舐めはじめた心をみて、透子は目を細める。
「それじゃ、心ちゃんので色々おしえてあげるね? いっしょに、キレイにしてあげる」
 心だけを座らせると、その太ももを抱えて『お花』に顔を埋めようとする。
{うわぁ、嘘みたいに軽い。それに、やっぱり良い香り、甘い、甘い香り……}
 こんなことをするのは初めてだが、透子は嫌悪感どころか、少しも汚いと思わない。
 むしろどんな味がするのか、楽しみでさえある。
「あ……いやだよ…だめぇ、汚いよぉ…」
 くたりと背中をカヴァーに乗せて、下半身を持ち上げられたポーズで、心は腰をくねらせる。
「あら? どうして? 心ちゃんの『お花』とってもキレイよ?」
「だって、だってぇ……さっき、おしっこ…したのに」
「そんなの平気よ。心ちゃんだって、私のをペロペロしたじゃない」
「でも、それは…違うよ、違うもん」
「同じよ――」
 透子の舌先が、クリトリスに触れる。舌で包み込むようにして内皮を剥ぎ、口中に含む。
 強く吸いつけて舌で転がし、軽く歯を立てる。
「ひぁ?! ん、んんぅ、あ……あ、あは、あん、あ、いや……いやぁ、だめ、だめぇ」
 くらくらするほど強い、甘い香り。透子は陶然となってしまう。
{……素敵、どんな味なのかな}
 クリトリスだけでは、愛液が少ない。心の味がよく分からない。
 いったん口をはなして、花びらで囲まれた入り口付近に舌を伸ばす。
 ぴちゅりと、透子の舌が触れる。
{うそぉ! おいしい…こんなに甘いの? 女の子のって、こんなにおいしかったの?}
 透子は瞠目する。
 初めて味わう自分以外の愛液が、あまりにも美味に感じられるのだ。
 ほんの微かな塩味を感じる。とても甘い、チーズのように濃厚なミルクの香り。
 微塩のバターのような、甘ったるい味わい。とても、とても後を引く味だ。
 夢中になって、ぺろぺろと舐めまわしてしまう。
「あ、あぁん……う、うあ、いや……ダメ、そこ、きたな…いよぉ」
「大丈夫、大丈夫よ。それにね、とってもおいしい。心ちゃんの、おいしい」
 わざわざ尿道口に口をつけ、啜り上げるようにする。
「いやぁ! 汚いよ、ダメ、ダメぇ! 汚い、汚いよ……あぁ…ふぅ、あはぁ♪」
 花びらを軽く噛んで、歯でこそぐように愛液を啜る。
「キレイな『お花』……この花びらで囲まれてるところを、膣前庭っていうの――ここよ、ここ」
 舌先で楕円を描くように舐め回して、示してやる。
「花びらのお外のふくらんでるところ、このぷにぷには大陰唇っていうの――心ちゃんはつるつるねぇ」
 顔じゅうが愛液にまみれるのも構わずに、頬擦りをする。
「おしっこの穴の下、ここを膣っていうの。とてもとても大切なところ……」
 尿道口から舌で舐めつつ、ゆっくりと移動して示していく。
 近づくとぐるりと円を描くように舐め、少しづつ円を狭めて、ぴたりと閉じた膣口に到達する。
「それじゃ、いただきます」
 透子はまるで、何日も空腹のままだった獣が、獲物にかぶりつく時のような光を瞳に宿している。
 キスするように唇を当てて、強く吸いつける。ゆっくりと舌を侵入させていく。
「ぴひゃ?! はふ、ひあ……ひ、ひぅ…あ、ぁあ、はぁ……ふぁああ! ひゃ、ひぁ、いやぁあ……」
 ゆっくり、ぬちぬちと舌を進ませながら、透子はそのきつさに驚いていた。
 舌に吸い付いて絡みつく肉襞はとても柔らかい。だが同時にきゅうきゅうと締め付けてくる。
 おいしい愛液に、この感触。舌を入れているだけで、どうにかなってしまいそうだ。
 透子はうっとりしながら、ぐにゅぐにゅと舌を潜り込ませる。
 すぐに、壁に行き当たった。とても浅い。
{あ……良かった。心ちゃん、処女だわ。ほんとに、ほんとに良かった……}
 もう、清十郎が浮気をしたかどうかなど、どうでもよくなっていた。
 ただただ純粋に、心が処女であることが、キレイな身体であることが嬉しかった。
 嬉しさでついつい夢中になって、口元をぐいぐい押し付けて、心の胎内を舌でかき回してしまう。
{全部、ぜーんぶ飲んじゃうから……心ちゃんは、心ちゃんは私のもの}
 透子は顔じゅうをすっかり愛液まみれしながら、その甘い蜜を啜り、飲み下していく。
「ひぁあ…ふあ、あふぅ……ひう、ひふ、うはぁ♪ ふぅう、あは、ひゃあ……あ、あ、うあ♪」
 可愛らしい悲鳴をあげながら、心はビクビクと痙攣するように震え続ける。
 はげしい愛撫を受けて抵抗すらできず、快感に溺れることしかできない。
 透子は舌を引き抜くと、心を抱えたままで器用に跨いで、身体を反転させる。
 自分の『お花』を擦り付けるように、心の顔前にお尻を突き出してくる。
「心ちゃんも、私の『お花』をぺろぺろして、ね? 好きにいじっていいのよ」
 透子は心の下半身を抱えているために、手を使えない。
 そのために、ふたたび舌だけで『お花』を愛撫してくる。
 心の胎内に侵入させて、肉襞と絡み合わせ、処女膜のすみからすみまで確かめていく。
 小さな穴を探り当てると細心の注意を払いつつ、舌先を細くして、めり込ませるように愛撫する。
「ひゃう?!」
 びくりと、心の身体が反り返る。
{心ちゃん、どうして? どうしてなの?}
 先ほどから心は、透子の『お花』をまったく弄ってこない。触れようとすらしていない。
 そのことが気にかかるのだ。そういえば悲鳴も止んでいる。
 耳をすますと荒い吐息に混じり、囁くような小声で、何事かを呟くのが微かに聞こえる。
「……はぁ、ん、んぅ…いやだよ……もう、もう、やだよぉ……たすけ、て…こわい、こわいよぉ……」
「――心ちゃん?」
 責めるのを止めて振り返ると、心は顔を両手で覆ってすすり泣いている。
 まるで本当の子供のように、幼い女の子のように、イヤイヤをしながら泣いている。
「…あ…心ちゃん……」
 自分は何をしていたのだろう? 透子は我に帰る。
 あまりにも可愛くて、おいしくて、弄るのが気持ちよくて――心も喜んでくれていると思って……
 それがどうだ? 心は泣いているではないか。こんなにもつらそうに、悲しんでいるではないか。
 心が処女なのかを確かめるだけで良かったはずなのに、これではまるで自分は獣だ。
「心ちゃん……ごめんなさい。ごめんね、許して……ごめんなさい、ごめんなさい……」
 透子は心を抱きかかえると、何度も、何度も謝り続ける。

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「……調べたって、何? ボクの、何を調べたの?」
 まだ潤んだままの瞳で、真っ直ぐに見つめてくる心に、透子の胸がちくちくと痛んだ。
{本当のこと、言おう。言わないと、駄目}
 どのみち、もうすでに傷付けてしまったのなら、少しでもこころの負担を軽くしたかった。
「ごまかしても意味ないから、はっきりいうね。あなたが、処女なのか調べたの」
「え……?! そんなの、当たり前だよ。ボク、男だもん。誰にもさせない、触らせないよ」
「分かってる。あなたは本当は男の子。でもね、今はこんなに可愛い女の子なの。それにこうして、私にすら、どうにかできてしまう……繊細で、かよわい女の子」
「それは…そうだけど、でも違う。こんなの、おかしいよ」
「あなたは悪くない。あなたが『そんな子』じゃないのは分かってるの……けど、周りはそうじゃない。あなたがどんなに抵抗しても……いたずら、されてしまう」
「そんなこと、させないよ!」
「相手が、清十郎でも? いまのあなたに、心ちゃんにそれができる? 勝てるの? 守れるの?」
「それは……勝てないけど、でも、でも、させないよ」
「無理よ」
「…………」
 心は言葉もない。それが事実だから。
「彼と会うなとは言わないし、言えない。あなた達の付き合いは、私とよりずっと、ずっと長い」
「清十郎は、そんなヤツじゃないよ……」
「確かに、彼は誠実な人。男同士なら、間違いなく信用できる人。でもね、分かってるでしょう? あの人の欠点なのよ……下半身は、まるで別の生き物」
 そこまでは言い過ぎかもしれないが、確かに清十郎は女好きだろう。
 長い付き合いだ、そのことは十分承知している。
 現に心は、さきほど犯されている。
 だが、彼が信用できる人物であることもまた事実なのだ。
 加えて元より友人の少ない心には、いま相談できる、頼れる友人は彼しかいない。
 或いは今すぐ会えるところに百合がいてくれたのなら、心は迷いながらも彼女のもとにいっただろう。
 しかし現実には、百合は遠い異国にいて、連絡すら途絶えてしまっている。
(百合……会いたいよ)
 皮肉なものだ。いまだからこそ、心は本当の気持ちで、百合と接することができそうな気がしている。
「私が、守ってあげる。何もできないかもしれないけど、でも、守ってあげる」
「透子ちゃん……?」
「きっと清十郎が、色々なことから守ってくれるはず……だから私は、清十郎からあなたを守る」
 透子は心を抱き締めて、決然と言った。
 そのまま唇を重ねる。長い、とても長い誓いのキス。
 舌を絡め合う二人の口元から、唾液が筋となってたれ落ちてゆくほどに激しい。
 唾液の糸を引いて、唇が離れた。
 二人はとろんとした、熱っぽく潤んだ瞳で見つめ合う。
「これからは、お姉ちゃんって呼んでね。絶対に清十郎と二人きりになっちゃだめ。必ず私と一緒よ?」
「うん……透子お姉ちゃん」
 心は可愛らしく、こくりと肯く。
「もし私がいない時は、必ず誰か一緒にいてもらってね? それから……二人の秘密よ? これからも、いっぱい、いーっぱい、気持ちイイことしようね――」
 いまだ露出したままの、心の『お花』に触れてくる。
「ひぁあん! お姉ちゃん……今日はもう止めてよぉ……あ」
 さらに透子は自らの『お花』へと、心の手を導く。 
「うふふ」
「ん……もう!」
 やっぱり、透子と清十郎は似たもの同士だと、心はそう思った。
 ふたたび二人は唇を重ねると、お互いの『お花』をかき回し、弄くりまわし始める。
 それから――くちゅくちゅという湿った音が止むまで、その唇が離されることはなかった。

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「おい! 遅いぞ、何やってたんだよ?」
 手をつないでピタリと寄り添い、ゆっくりと歩いてくる心と透子に、清十郎が声をかける。
「たかが小便で、なんで小一時間もかかるんだ?」
「ごめんね。ちょっと混んでて、しかも知り合いと話し込んじゃったから……」
「……ふーん。んで? 余計なことはしゃべってねえだろうな?」
「余計なこと?」
「心のことに決まってるだろうが」
「言うわけないわよ、当たり前でしょう? 私は莫迦ですか!!」
 清十郎は不機嫌だ。これだけ待たされれば無理もあるまい。
 それに心と透子が、やたらとぴったりくっついているのも気に入らないのだろう。
「ん? お前ら、香水でもつけたか?」
 二人の火照った身体からは、衣服にまで染み込んだ甘ったるい雌の匂いが、強く漂っている。
 清十郎が気付かぬわけが無い。
「ううん。何も――って、いやねぇ……清ちゃんたら、心ちゃんのことをそんな風に…嗅いだりして、いやらしい!! どういうつもり? 友達にまでそんな……女の子だったら誰でもいいの?」
 反対に難癖をつけて、透子は清十郎に詰め寄る。
 完全に言いがかりなのだが、後ろめたいことがあるせいで、清十郎は言い返せない。
 むっつりと押し黙ってしまう。
 先ずは作戦第一段階、成功といったところか。
 あのあと、心と透子はお互いの『後始末』と身支度を綺麗にして、軽く打ち合わせをした。
 特に『お花』は念入りに、舌と口で隅々まで徹底的に、愛液の最後の一滴まで啜り、舐めつくした。
「んじゃ、まあ、行くか。もう用はないんだろ?」
 清十郎はあくまで、不機嫌な表情を崩さずに二人をうながす。
「何よ、その仏頂面は。可愛くないわね」
「うっせぇ! 野郎が可愛くてたまるか!」
 ぶつぶつと文句を言いながら、歩きはじめようとする。
「――心ちゃん」
 透子の声に、心はこくりと肯く。すっと清十郎の前に回りこんで、彼の手をとる。
「――? 何だ、心?」
 続いて透子も、清十郎の首に腕をまわして抱きつく。
「これで、機嫌なおしてね♪」
「おにーちゃん♪」
 ぐいっと引き込んで屈ませながら、透子は清十郎の唇にキスをする。
 同時に心も飛びつくと、彼の頬に軽い口付けをする。
「ばっ莫迦!! お前ら、何すんだ!」
 さすがに清十郎も、人前でコレは恥ずかしいとみえる。真っ赤になってうろたえている。
「ほーら、可愛くなった。ねぇ、心ちゃん」
「どうしたの、清十郎? 真っ赤だよ?」
「うるせぇ! うるせぇ、くそっ!!」
 二人に背を向け、足早に歩いていく清十郎。しかしその顔は、すっかりだらしなくゆるんでいる。
{……可愛いなぁ。二人とも、連れて帰って……くそう、たまんねぇ〜}
 作戦はまんまと成功したようだ。
 これで今日は二人が多少のワガママをしようと、清十郎は上辺だけは不承不承、だが内心は嬉々として、どのようなことでも付き合ってくれるに違いない。

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