10

「嫌だ嫌だー! 放せっ!放せぇー!!」
「あらあら、心ちゃんはわがままさんねぇ‥‥」
 手足をバタつかせての抵抗も空しく、浴場に、脱衣場に着いてしまう。
 あっという間にハダカに剥かれ、素早く衣服を脱いだ2人に、風呂まで連れて行かれる。
 ここまできたら、さすがに観念するしかあるまい。大人しく言うことを聞く。
 (それにしても――)
 2人とも見事なプロポーション、大人の女性の身体だ。
 どちらも砲弾のように張り出した形の良い乳房と、艶めかしく括れた腰、丸みを帯びた臀部をそなえている。
 股間には黒々とした茂みが見える。それを隠そうともしない。
 いまは姉妹だから当然なのかもしれないが、2人のこんな姿を見るのは初めてだ。
 朝も恋とは一緒だったが、あの時はこんなことを気にする余裕もなかった。
 身長は愛の方が若干低いが、胸は彼女のほうが大きいようだ。
 妹のこのような姿をみても、当然のごとく心はいささかの興奮も覚えない。むしろ、妙な感慨があった。
 (いつの間にか、一人前の、大人の女になってたんだな‥‥)
「さっ、心。ここに座って――髪洗うからね」
 風呂椅子が二脚しかないため、愛の膝の上に座らせられる。隣では恋が既に自分の髪を洗い始めている。
 愛が心専用のシャンプーを手に取り、泡立てはじめる。
 男だった時から、シャンプーやらボディソープは各自専用の物を使っていたが、自分のそれが容器の形は同じでも、色や表示が変わっていることに、いま気が付いた。
 (あの時は、目閉じたまんまだったからな。でも、匂いは同じだけど明らかに違うモンだ、コレ)
 そんなことにも気付けなかったほど、うろたえていた自分に苦笑する。
 優しく丁寧に、愛の指先が心の髪を、地肌を洗う。心地よさに大人しく身を任せた。
 (下手な床屋やら美容院とかより、よっぽど気持ちいいな……)
 リンスも済んで、髪をすっかり洗い終わると、
「はい、タッチ!」
 ひょいっと、愛から恋の膝の上に手渡される。いかに今の心が体重30kg未満でかつ小柄であるとはいえ、女性にこんなにも軽々と扱えるものだろうか?
 もっとも、恋は弓道に合気道、愛は剣道に居合いを嗜んでいて、学生の頃は双方とも大会でそこそこの成績を収めていた。
 まったく普通の女性よりは、力もあるし身体の使い方もうまいのは道理なのだが‥‥‥
「心ちゃん。今度は身体をキレイにしましょうね」
「あ‥‥」
 朝のことを思い出し、思わず頬が紅くなってしまう。
「自分でできるよ‥‥‥」
「髪は愛ちゃんに洗ってもらったのに? ズルい!」
「ズルいって‥‥」
「いいから、遠慮しないで」
 否も応もなく、恋は心の身体を膝の上に抱えて洗う準備をはじめる。大きなスポンジが心の身体に当てられる。
 手から腕、肩から背中へとまるで赤ん坊でも扱うように丁寧に洗っていく。
 洗われる間に時折、恋の胸が心の頭に押し付けられる。
 (ふかふかだ‥‥)
 なにを考えているのだと自分をたしなめるが、母に抱かれたような安心感が心のこころを解きほぐしていった。
 恋の手が、スポンジが心の胸を洗いにかかる。ぴくんっ――と一瞬、心の身体が強張る。
「ん……」
 だが安心感の方が勝るためなのか、甘ったるいような、むずがゆいような心地良さを感じるばかりで、朝のように強烈な快感は襲ってこない。
「ふぅ――」
 安堵した心は、すっかり身をまかせてしまう。肌をほんのりと桜色に染めた姿はまるで、本当に幼い女の子だ、とても15才には見えない。
「はい、ちょっと立ってね――そう、そうよ」
 心を立たせると、尻から脚にかけてを洗ってくる。もちろん怪我した脛を刺激せぬよう細心の注意を払っている。
「おやおやぁ? 『お姫様』はほんとは『仔猫ちゃん』だったみたいねぇ?
 ママにすっかり甘えちゃって――」
 素早く髪と身体を洗い終えた愛が茶々を入れてくる。
「違う! そんなじゃない!!」
 我に返った心は、愛を睨み付けて抗議するが、いまの自分を振り返って、説得力がないことに歯噛みする。
 (くそっ!! 僕はなにやってんだ!? どうかしちまってる‥‥)
 いかに本人が大真面目でも迫力の欠片もないばかりか、我知らぬ間に涙さえ浮かべている心に、愛はどこ吹く風と余裕の表情だ。
 (前言撤回!! コイツのドコが大人の女だ! そうだ、コイツはいつもこうなんだ!!)
 何故か、ママと言われたことにまんざらでもない様子で照れていた恋が、心の涙にはっとして、
「愛ちゃん! 心ちゃんをからかって、虐めたりしちゃ駄目!」
「おー怖い怖い。ママが出てきたぞー」
「愛ちゃん、来月のお小遣い無しでいいのね?」
 笑顔でぴしゃりと言い放つ。さすがに愛も言葉に詰まり、
「あ、あの? 今月、仕事少ないんで、勘弁してください‥‥ごめんなさい」
「謝る相手が違います」
「心、ごめん。本当にごめんね? ほら、あんまり可愛いとつい虐めたくなっちゃうの、ね?」
 さきほどまでと打って変わり、両手を合わせて謝りだす。
 (だいたい働いてるくせに、小遣い貰うとは何事か。大学生の僕だって、バイトで遣り繰りしてるってのに――
 でも…まっ、いいか)
 なんだかんだ言っても、心は妹である愛には甘い。いまは自分が妹の立場にあるとはいえ、それは変わらない。
「分った。許す」
「良かったわね愛ちゃん、お許しがでたわよ」
「心、ありがと!」
 いきなり抱きつくと、キスを見舞ってくる。舌を挿し入れ、心のそれにからませてくる。
「んー!んん………ん‥‥‥」
 感謝の口付けではない、完全に心を『味わって』いるディープキスだ。
 時間にすればわずかに十数秒ほど、しかし‥‥‥‥
 (まずい………変なかんじ‥‥する)
 下腹部の奥のところに身体のどこかから、なにか温かいモノが流れ込んでくるような感覚。
「愛ちゃん何してるの!やめなさい!!」
「「――ん…ぁ」」
 恋の声にこたえるように二人の唇が離れ、唾液が糸を引く。
「何って、お礼とお詫びのキスだけど?」
「そんなお礼がありますか! 心ちゃんが嫌がってるじゃないの!!」
「‥‥‥‥‥」
 (朝と同じかんじだ……どうしよ…どうしよう)
「そんなことより早く湯船で温めてあげないと、心カゼひくかも――」
「あっ‥‥そうね、そうだわ。急がなきゃ――心ちゃん、続きを洗っちゃいましょうね」
「…自分でやる」
 いま触れられたら、朝と同じようになりそうで怖かった。
「こらこら、急にワガママ言わないの」
 愛によって後ろからひょいと、両足を持って抱え上げられる。
 小さな子供が用を足すのを手伝ってもらう時の格好、俗に言うしーしーポーズだ。
「洗ってないの、後はココら辺だけでしょう?」
「やめろぉ! 嫌だっ…やめろ…やめろ…やめて‥ください」
「すぐに済みますからね‥‥‥」
 内腿にスポンジが当てられ、細い両太腿の付け根、その中心部を避けるように洗っていく。
「ココはデリケートなところだから‥‥‥」
 恋はボディソープをたっぷり泡立てると、その手で直に心の『女の子』に触れてくる。
「んんぅ‥‥ぁ‥」
 執拗なくらいに何度も何度も、ぷにぷにした大陰唇を拡げたり閉じたりしてくる。
「恋姉、中もちゃんと洗ってあげないと。心のために特別に選んだソープだから目や口に入っても無害だし、赤ちゃんだって平気なくらい刺激のないヤツだから――大丈夫だよ?」
 震える心の涙を舐め取り、愛が笑顔で言う。
「ええ、分ってるわ‥‥‥」
 口元に微かな笑みを浮かべ、クリトリスの付け根からしごくようになぞり上げる。
「ひぅ‥‥ぅ‥ぁあ‥‥んぁ……はぁ…ん……あぁん……はぅん…あ…いやぁ…いやぁ…」
 心の秘裂のすみずみまで、指の腹を使って汚れを掻き出すようにラビアやその周りを弄ぶ。
 ちゅくちゅくと音を立てて恋の指がうごめく度に、ピクンッピクンッと心は全身で反応する。
 逃れようとしてか、それともより強い快感を求めてか、心は徐々に腰をくねらせ始め、次第に息が荒くなっていく。
「ふふっ、可愛いわねぇ」
「ええ、ほんとに――」
 ちゅぷんッ――と妙に可愛らしい音を立て、恋の指が胎内に侵入した途端にピタリと心の動きが止まる。
 目を見開いて口をぱくぱくさせ、声にならない悲鳴を上げる。
 恋の指はすぐに処女の証に行き当たり、それを傷付けぬように注意しつつ、ちゅぽちゅぽと胎内をかき回す。
「あら?」
「どうしたの?」
「何でもないわ――」
「いやぁ…もう…やめて…やめてぇ…やめろぉ!…」
「あっ! こらっ! 危ないから動いちゃ駄目!!」
 恋の動きが止まったわずかな隙をついて心は再び抵抗を始めたが、愛によって今度は片手で両足を抱えられ、同時に両手を掴まれて、さらにしっかりと拘束される。
「しょうがない『お姫様』ね……もっと良くしてあげるから――恋姉、私が上をやるけど、いい?」
「やさしくしてあげてね?」
 こたえるように頷きつつ、心の唇をふさいで舌をからめる。同時に空いた手で小さな乳房を弄び、先端の蕾をつまむ。
「んー!!‥‥んん……ん…ン‥‥ン‥‥」
 もはや声を上げることすらできなくなった心を攻め立てるしめった音だけが、しばらくの間ちゅぷちゅぷといやらしく浴室の中に響いた。
 終わりは間もなく訪れた。数分も経たぬ内に心の意識は闇の中に沈み、その身体から力が失せる。
「やり過ぎちゃったかな――ちょっと恋姉? 何してんの、まだやる気?」
 恋は心の身体の泡をシャワーで流しつつ、秘裂を押し拡げて胎内を覗き込むように凝視している。
「やっぱり‥‥」
「何がやっぱりなの? ねえ?」
「話はあとよ。早く心ちゃんを温めてあげましょう……」
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いまだ意識の戻らない心を、恋が抱えて湯船に浸かっている。その対面に愛がくつろいでいる。
「やっぱり、一日に二回はちょっとやり過ぎかしら?」
「二回って――どういうこと?! ひょっとして、朝も?」
「ごめんなさい。つい‥‥ね」
「気を付けてよ! 心は退院したばっかりなのに――まあ、いいわ。それより‥‥さっきのは何?」
「あのね、明日は朝いちで田崎先生のところに行こうと思うの‥‥」
「それじゃあ――ひょっとして?」
「ええ、もしかしたら‥‥私の勘だけど」
「ふーん。これからは順調にいくといいのに…ね?」
「そうね‥‥」
「――何が順調にいくと……いい? 僕が‥‥僕のなにが?」
「心ちゃん! ううん、なんでもないの――心配しなくていいのよ、大丈夫ですからね?」
「そうよ、心は私たちが守ってあげる。だから大丈夫‥‥ねっ?」
 (僕は‥‥僕は守って欲しくなんか…ない‥‥のに)

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