6

 セネアのそれが令の秘部を押し広げるようにゆっくりと侵入してきた。
 快楽に翻弄されていた令の体にじわりと未知の痛みが流れ込む。
「やめ…ああッ! そ、それ以上入れな……」
 セネアの男根が進む度に、令はビクビクと体を震わせて痛みに耐えた。
 が……何かに遮られるようにその歩が止まる。
「さあ令……これで貴方も生娘から本当の女になるのよ。貴方の初めて……私がいただくわ!」
 その言葉に令はそれが何であったのかを理解したが……思うが早いか、セネアはその腰を一気に突き入れた。
「うああああああああぁぁぁぁ―――――――ッ!」
 ぶつりとなにかが切り裂かれたような感覚とともに、令は秘部からの痛みに絶叫する。
 令の体に侵入しているのは15センチそこらの擬似男根のはずなのだが、令自身にとっては、まるで巨大な杭で全身を貫かれたかのような衝撃があった。
 そしてその亀頭が令の深奥にコツリとぶつかった時、令の脳にズンッ!と新たな衝撃が加わる。
 それは令にとって未知の器官の衝撃だった。そして令は無意識にそれが何であるかを理解する。
 −そんな…子宮が……−
 それはもう令の体が見た目だけでなく機能まで完全に女のものである証明だった。
「はあぁッ…令の膣(なか)すごくキツいわ。しかもキュって絞めつけてくる……。」
 セネアが感極まった声で令を見下ろす。彼女は痛みで顔を歪める令とは反対に、令から与えられる快楽と令を支配した喜びで恍惚の笑みを浮かべていた。
「お、お願い……ぬい…」
「動くわよ、令。」
「ま、待っ……!! あ、うああああぁぁッ!」
 令の懇願を無視してセネアは腰の律動を開始する。その途端に令の体を新たな痛みが貫いた。
 ゆっくりとしていたのは最初の2,3回だけで、すぐにその腰は激しく令を攻め立てる。
 無意識にシーツを掴んだ手に力が入り、痛みで目に涙を浮かべて叫ぶ。
 それでもセネアの腰は止まることなく、むしろ少しずつ勢いが増していった。
 だが、しばらくしてその光景に変化が訪れる。令の声に明らかに痛み以外のものが混じり始めたのだ。
 これにはセネアも意外だった。なにしろ令はまごう事なき処女である。
 さらに言えば普通の処女よりも遥かに純潔度が高いともいえる”生まれたて”の処女だ。
 だが腰を突けば突くほど、令はあきらかに嬌声と取れる喘ぎを発し始めた。
「……ッ! はあぁ……あ、あああ……や、ああああぁッ!」
「すごい……令ったら初めてなのに感じてきたの? やっぱり令って常識知らずの淫乱なのかしら。」
「そ…そんなことな、あぁッ!ひゃふッ! お願い!そんなに激しくしな…ああああ!」
 令の懇願を無視し、セネアの腰はますます激しくなる。
 いや、無視せざるえなかったと言った方がよかったのかもしれない。
 驚いた事にセネア自身が令を攻め立てる快楽に酔っていた。それを引き出したくてどんどん暴走する。
 淫魔である自分が逆に快楽に飲まれるなど、信じられない事だった。
 当の令はもう痛みなど微塵も見せずにセネアの責めに喘いでいる。
 そのピンクに染まった肌に汗を滲ませ泣き叫ぶ令を見るとセネアの心はますます興奮した。
「可愛いわ令……もう完全に女の子、全身で女を感じているのね……」
「ひゃうう! そ、そんなのちが…やあっ!だめ!ひゃあああああッ!」
「令ったら、初めてなのにすごくイヤらしい顔してるわ。これなら……」
 初めてで令をオーガズムまで導ける。そんな考えがセネアの脳裏に浮かんだ。
 そうなると意地でも令をイかせてみたくて堪らなくなる。しかし処女の激しい絞めつけには淫魔たるセネアだっていつかは達してしまう故、悠長にもできなかった。
 とはいえ淫術で強引にイかせるなど風情もなにもない。やはり自分自身で令をイかせたいのだ。
 だからセネアは突き上げるだけだった腰のリズムを止め、令の秘部の中のあらゆる部分を責め上げるように複雑な動きに変えた。
「なっ…ひうッ! なにこれ……きゃううっ!ひゃううううッ!!」
 逆に巧みな技巧の責めを加えられた令はひとたまりもなかった。
 セネアの男根がまるで別の生き物のように令の中を跳ね回って責め始めたのだ。
 秘部の入り口を責めていたかと思うと、突然深奥まで突き上げられる。
 それがまた引いたかと思った瞬間にまた子宮口まで突かれ、その動きは予測をまったく許さない。
「あふっ……だめ! こんな…の……信じられなあああああぁぁ! ひゃあうっ!」
 もう令の心は何かを思考することすら困難になっていた。
 だが自慰の時にも最後の最後以外僅かに自分自身が存在していたように、令は必死に意識を保とうとする。
 −こんなの……ダメだ! 僕は男なのに…!!−
「あら? 令ったらこの後に及んでまだ認めないの……?」
 責め続けるセネアから、まるで令の心を見透かしたような問いが投げ掛けられる。
「そうね……本当に男の子なら女の絶頂なんて迎えるはずないわよね。そうでしょう?」
「と…ああっ…当然だろ! ああああうぅ! やああっ!」
 令は僅かな意識で必死に強がる。だがこの瞬間にも令の口は途切れる事なく嬌声を発していた。
「不思議……令のそういう強情なところも何もかも愛しいわ。でも無駄よ……」
「そ、そんあああぁっ! そんな事な……ひゃう! ああああッ! ひうッ!」
「じゃあ、証明してみせなさい! こっちも本気でいくわね。」
 そんな!それじゃあ今までのは……という令の思考は最後まで行われる事はなかった。
 腰だけでなく両手を使ってセネアは更に激しく複雑に令の体を責めを始めたからだ。
 その瞬間、令には上り詰める以外の選択肢は否定されてしまった。
「ひゃああああああッ! やぁだめえぇぇ! お願い!もう……そんああああッ!」
「くッ…私ももう限界だわ。さあ令、本当の女の喜びを……味わいなさい!!!」
 さらに力強くセネアの腰が律動し、そしてとどめとばかりに大きく突き上げた。
「あっあああああああああああぁぁぁぁ―――――――ッ!!!!」
 令の頭の中で白い光が爆発し、その意識が一気に霧散した。
 全身が大きく仰け反り、足から腰までが彫像のように美しくカーブする。
 その体の中で男には存在しない器官がセネアの男根をきゅうと締め上げ収縮するのを感じながら、令の意識はゆっくりとフェードアウトしていった。
 どれほどの時間が経過したのか、令はようやくまどろみの中から目を覚ました。
 意識が少しずつはっきりとしてゆくにつれ、令は自分が寝る直前までの状況を思い出す。
 そして事の重大さに気が付いた時、まるでバネ仕掛けの人形のように跳ね起きた。
「あ……あれは! ゆ、夢……?」
 それは意識の混濁が言わしめた言葉なのか、令自身の希望だったのかはわからない。
 だが、令はすぐにそれが夢ではなかった事を理解する。
 前に起きた時に自分自身を確かめた鏡に写っているのは、まぎれもなく女のそれだったからだ。
 それに、股間に痺れるような痛みがあった。これは朝立ちなどでは決してない。
 −童貞を返上する前に、僕は処女を失ったのか……−
 なにか複雑な喪失感が令の頭をかすめる。そこまで考え令はようやくその自身の純潔を奪った張本人
 の事を思い出した。が、そのまま慌てて部屋を見渡すものの、セネアの姿はどこにもなかった。
「やるだけやって……か。」
 結局今の令に残されたのは女としての体を持った自分の存在だけである。
 セネアの話によれば元に戻る事も不可能ではなさそうだが、当のセネアを呼び出す事は適わないし、そのためには今はまだ施行できないという契約を成立させる必要があった。しかもその内容すらわからない。
 令は暗澹たる気持ちで時計を見た。時間は五時半で、空は朝日が眩しくなりつつある状況だ。
 つまり女になって丸一日が経過した事になる。
「学校……行かなきゃなぁ……」
 すでに一日無断欠席、さらにこんな体と問題は山済みだが、令は自身の日常を取り戻すためベットから静かに立ち上がった。

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