28

「そんなこと……ないよ……」
 カイトの問いかけに葵は弱々しく首を左右に振った。
「あの旧校舎で、おまえはいわばオレの『飼育係』だった。檻から逃げたオレを連れ戻す役割を命じられてないと断言できるのか?」
 半ば自問のようにカイトはいった。
「私は……お兄ちゃんの命令には逆らえないわ」
「てめ……」
「でも、お兄ちゃんは私に何も命令してない。忙しいときのお兄ちゃんは私のことなんて頭に無いもの」
 葵は自分の言葉に傷ついたように目を伏せた。
(嘘をついてる雰囲気じゃ……ないか)
 カイトは葵から手を離した。
 葵は体を起こしてスカートの乱れを直した。
「……悪かったな。学校あるのに呼び出して」
 自分でいってから、カイトはびっくりした。他人を気づかうような言葉を口にしたのなど久しぶりだった。
「ううん。私に連絡してくれて嬉しかったから」
「他に頼れるヤツがいないんだよ。友達なんて上等なモン、オレは持ってねえからな」
 葵が何かいおうとする前にかぶせるようにカイトは尋ねた。
「浩司って奴のこと、何か知ってるか。あいつがどうなったか知りたいんだ」
「浩司……?」
「ああ。あの教室でオレを犯しやがった一人だ。でも、そいつのおかげでオレはあそこから逃げ出すことができた」
「ごめんなさい。何も聞いてないわ」
「そうか……」
「ねぇ……その浩司って人、カイト君のこと好きになっちゃったんでしょう?」
「な、なんだよ突然。どうだっていいだろ、そんなこと……」
 カイトは狼狽えた。
 浩司に「惚れた」と打ち明けられたときのことが頭をよぎると、自然に耳までカァッと暑くなってくる。
(なんでだよ……あんな奴に女扱いされて悔しかった筈なのに……)
 葵がカイトの顔の輪郭を確かめるように手を這わせた。
「無理もないよ。カイト君、こんなに綺麗なんだもの。男の子だったら誰だって彼女にしたいって思うよ……」
「やめろ。吐き気がしてくるぜ」
「でも、いまのカイト君はどんな男の子だって惚れちゃうような美少女なんだよ?」
「こんな女の体にされて……心まで女になったら、オレじゃなくなっちまう!」
「でも……心は、肉体の奴隷なんだよ。前に、お兄ちゃんが言ってた。だから私はお兄ちゃんから逃げられないの」
 葵は下腹のあたりに手を置いた。そこが子宮の位置する場所だと、同じ性を持つカイトにはわかる。
「違う……たとえどんなに体をいじられても、心だけはオレのものだ」
 葵からの返事はなかった。
 葵は布団の上に散らばったグラビア誌を見つけてしげしげと眺めていた。
 きわどいポーズのヌードショットが開いたままになっていた。
 エログラビアを片付けないまま葵を上げてしまったことをカイトは少しだけ後悔した。
「これ、カイト君が見てたの?」
「悪いか。体は女にされても、エロ本くらい見るんだよ」
「男の子の気持ちが残ってるんだね。でも、男の子のつもりで女の人の裸を見てても、それ以上はできないでしょ? その、男の子がするみたいなことは。カイト君、体は女の子だもの。辛く、なかった?」
 葵の慰めるような口調が、カイトの癇に障った。
 カイトは暴発して、葵が手にしていたグラビアをはたき落とした。
「うるせえ! わかったようなこと言うんじゃねえ!」
 カイトは葵の胸を突き飛ばした。
「きゃっ……」
 布団の上に葵は無防備に倒れた。
 その上に馬乗りになってカイトは命じた。
「葵。胸、はだけろ。いますぐだ」
 カイトの目が本来の残忍な輝きを宿した。可憐な少女の貌でありながら、瞳だけが女らしい容貌を裏切るようにギラつく。
「どうして……」
「男が女のエロい姿見たくなるのにどうしてもクソもあるか。オレは男だって何度も言った筈だぜ? ほら、早くしろ!」
 強く促されると、葵はいわれるままにもそもそと手を動かし始めた。
 仰向けになったまま制服のブラウスをはだけた。
「その下もだ」
 と顎をしゃくられ、葵はブラも外した。
 プルンッ……
 ティーンエイジ特有の固く張りのある乳房が露わになった。
 カイトの胸よりは小ぶりだが、形は綺麗なお椀型をしている。濃いめの色をした乳首が真上に向かってツンと立ち上がっていた。
「隠すな!」
 おずおずと胸を隠そうとした葵にカイトは一喝した。
 恥ずかしそうに腕を下ろし、カイトの視線から身をよじる葵。それを見てカイトの胸の奥でズクンと形にならない快感が起こった。
(いつものアノ感じだ……)
 女をモノにするとき味わう、男としての征服の快感だ。
 胸の奥の昂揚感に連動する下半身の灼熱がないことだけが悔しかった。
 それども葵の恥じらった表情は充分に男としての征服、支配欲をくすぐる。
 衝動にまかせてカイトは葵の乳房を掴んだ。
「あぅ……」
 ピクリと葵が敏感な反応を示す。
 カイトの手の中で震える果実は、カイト自身のそれと比べてより未熟で手応えが固い。
 容赦なくカイトは手の中のふくらみを鷲掴みにして握った。
「い……た……」
 葵が途切れがちな声をあげて唇をわななかせた。
 乳房を乱暴に握られることがどれだけ痛いかはカイト自身が味わっている。それだけに、苦痛に耐える葵の顔は嗜虐心をそそった。
「くく、もっとオレを楽しませろよ。てめぇも大人しそうな顔して、男とハメたのは一度や二度じゃねえんだろ?」
「いやああ……」
 葵は身をよじるだけで答えようとはしなかった。
「そういう声出されると男としちゃたまんねぇんだよ」
 作れる限りの低い声でカイトは囁いた。その囁き声に反応するように葵が震えた。
 カイトはさらに両手で葵の乳房をこね回した。
 手に吸い付くような女の肌の手触りと、手を押し返してくる胸の弾力にカイトは陶然となった。
(ああ気持ちいいぜ……)
 葵はときどき耐えかねたように声を漏らすが、積極的に抵抗しようとはせずなされるがままだった。
 そんな葵の態度がますますカイトの欲望に火を付けた。
 わざと爪を立てるように左右の胸を掴むと、葵はかすかに呻いて体を突っ張らせた。
「痛いか? へっ。イヤらしいオッパイしやがって。自業自得だぜ」
「カイト、君……どうして、こんな……」
「黙れよ。女の体なんて男を悦ばせるためだけに存在してるんだ。女なんてしょせん男にとっちゃオモチャなんだよ!」
「カイト君は……そんなふうに思ってるの……?」
「悪いか!? おまえはオレのことを憐れんで、のこのこと家まできたんだ。こうされても文句は言えないよなあ?」
 カイトは執拗に葵の乳房を責め続けた。
 まるで乳搾りでもするように乳房のふくらみの裾野から頂へと胸を揉む。
 その動作を繰り返すうちに目に見えて乳首が大きくなってきた。
「インランめ。こんなメチャクチャに揉まれて感じてんのかよ?」
「や、そんなこと……!」
 キュウッ!
 カイトは前触れ無しに固くなった乳首を摘んでしごいた。
「ひっ、ひゃああっ……ダメぇっ!」
「ヘヘッ、んなとろけた声出してダメも何もねぇな」
 無意識のうちにカイトは女にとって最も感じるような乳首の責め方をしていた。
「どうだよ。気持ちいいのか?」
「ああ、や……い、た……」
「痛いよりも気持ちいいんだろうが!」
 焼けるように熱い乳首をキリキリと摘んだかと思うと、次は爪先で弾く。
 乱暴な愛撫にも次第に葵は甘い声で反応するようになっていった。
「へへ……」
 カイトの欲情した舌なめずりは美少女の容貌とひどくアンバランスだった。それでいて、見るものをハッとさせるような一種の淫靡さを帯びていた。
 サラシの下にカイトは熱くなった自分自身の突起を感じた。葵のそれに劣らぬほど尖りきった乳首がサラシにつぶされて悲鳴を上げている。
(こんなときまで反応しやがって……クソッ!)
 カイトはつとめて自分の体のことは考えないように、葵をいたぶることに集中した。
 葵のスカートを脱がせ、パンティの上から秘部を愛撫した。
「あっ、あっ、だめだよぉ……止めてぇ……」
 弱々しく葵が哀願するがカイトは構わずに続けた。
 カイトの指先は女体で最も敏感な突起を探り当てていた。
 パンティの上からだとかすかにわかる程度のクリトリスを指で擦った。
 擦り方に変化をつけるたびに葵はビクビクと体をひきつらせて反応する。それがカイトには面白かった。
 かつてのカイトならすでに挿入している頃合いである。にも関わらずカイトは執拗に前戯に没頭した。
 くちゅっ、くちゅっ……
 葵のパンティが湿った音を立て始める。
 カイトの責めは的確に女のツボを突いて葵を追い立てる。
 葵はすでに快感のあまり小刻みに震えている有様だった。
「文句言ってたくせにしっかり感じてんな。女なんて生き物はしょせんそんなモンだ」
「ダメ……カイト君だって、女の子の体、なんだから……」
「黙れよ、メスブタ!」
「ひ……んっ…………!!」
 充血しきっていた豆を強く摘まれた葵は、それだけで震えながらイッてしまった。
 足を突っ張らせてイキながら、葵は涙をこぼした。
「へっ、泣くほど良かったのかよ!」
「あ……カイト君……私……」
「まだ終わらせねえよ!」
 カイトは追い討ちをかけるように葵の濡れたパンティを引きずりおろすと、薄桃色の花弁の中央にダイレクトに指を突き立てた。
 絶頂の余韻にいまだうかされていた葵はすぐさま、次の波にとらわれて苦しそうに目をつぶった。苦しいほどの快感に晒されているのである。
「そういう顔……ゾクゾクすんだよ」
 くちゅっ、くちゅっ、じゅぷっ!
 指二本で巧みに秘裂の壁を愛撫すると、葵はマリオネットのようにがくがくと震えてそれに反応した。
「またアホみたいなツラしてイッちまえよ!」
「ああっ、いやあぁ……もう許して、カイト君……」
「ダ・メ・だ・ね」
 魔性に憑かれたような笑顔でカイトはいった。
 女体の秘芯を責め立てる指の動きは止まることを知らない。
 カイトは自分で気付いてなかった。男のときならとうに愛撫から挿入に移ってる頃合いである。
 挿入による快感への欲求を、愛撫の精神的快楽が上回っていた。挿入のための器官を持たない体では当然の帰結である。
 カイトの心と裏腹に、延々愛撫を続けるその行為は、レズビアンのセックスに酷似していた……
「カイト君は……カイト君は……」
「オモチャのくせに喋ろうとすんなよ」
 しこりきった葵の乳首を指の腹で押し倒すと、葵は声をこらえたまま軽くイッてしまった。はだけた上半身は度重なる責めのせいで桜色に染まった。
 カイトは指による責めを秘所に戻すと、代わりに上体を重ねて葵の胸の前に持っていった。
 眼前に形の良い二つのふくらみがはずんでいる。
 チュパッ……
 サディスティックな表情でカイトは葵の胸の蕾を口に含んだ。
 その瞬間に葵の顔がひきつった。
「ダメ、そんなしたら……」
 チュッ……チュパッ……
 わざといやらしい音を立てて乳首を吸った。
「ひああああああっ! やああああ……!」
 正体もなく葵は悶えた。
(そうだ……もっとヨガレよ! オレはコイツを支配してんだ!)
 さんざんに舌で乳首をねぶると新しい種類の刺激に葵はいま責めを始められたかのように激しく反応した。
 カイトは乳首から口を離すと唾液で濡れた突起をゆるゆると掌で弄んだ。
「いやぁ……そんなふうにされたら、私、私……」
「生殺しがイヤなら言ってみろよ。淫乱な私のマンコにブチ込んでくださいって」
「やぁぁ……ひどいよ……」
「マンコびちゃびちゃに濡らしといてよくいうぜ! そんな口にはな……」
 カイトはハーフパンツのジッパーを下ろした。
(あっ……!)
 葵の口にペニスを突っ込もうとしてカイトは内心で舌打ちをした。
 つい勢いでジッパーを下げてしまったものの、カイトの股間には本来そそり立ってるはずのペニスがない。
(くそ……こんな体じゃなきゃ!)
 頼りなくスースーとする股間を恨めしく思いながらカイトは代わりの手段を探した。
(あれを使うか!)
 机の上に転がってた万年筆に目をつけてカイトは伸び上がるとそれを手にとった。
 万年筆の丸くなった尻の部分は、少々細すぎるがディルドーの代用品になりそうだった。
(マンコに突っ込んだあと、自分の口でしゃぶらせてやるか)
 ぺろりと万年筆の先端を舐めてからカイトはそれを葵の秘部に持っていった。
 葵の股間に顔を近づけたカイトは自然と葵の顔に背中をみせる体勢になっていた。
「へへ、指だけじゃ物足りなくなってたとこだろ?」
 そういってから、焦らすように小陰唇を万年筆の先でなぞった。
 葵のそこは汁まみれになって物欲しそうにひくついている。
 一気に突き立てようと万年筆を強く握ったカイトは、これから女を犯すという昂揚感に顔を輝かせた。
 自前のペニスで貫けないことだけが心残りではあった。
 背後で葵がするりと上体を起こしたことにカイトは気付きもしなかった。
 穿いていたパンティの股間の布をずらされたとき、カイトの反応は滑稽なほど鈍かった。
「……あ?」
 疑問の声をあげたときにはすでに遅かった。
 チュプンッ……
「うくぅっ……?!!」
 細くしなやかな指がカイトの割れ目に侵入してきた。
 責めることにばかり夢中になってたカイトは無防備なままその侵入を許してしまった。
「な……なにしやが……くはぁぁっ!!」
 カイトが己の股間に手をやろうとした瞬間、それまで浅く差し込まれただけだった葵の指が第一関節を越えてカイトの中に深く入ってきた。
「あ……うあぁ……」
 全く唐突な挿入にカイトは持っていた万年筆すら取り落として呻いた。
「カイト君にもしてあげるね……気持ちよいやりかたでしてあげる」
「なに……を……ゃあああっ!」
 逃げようと腰を浮かすとさらに深く指を突き上げられ、カイトの腰は砕けてしまった。
 すとんと葵の指の上に腰が落ちてしまう。
 ズブリッ……
 完全に指で貫かれ、カイトは病気のサカナのように口をパクつかせた。
「カイト君、かわいい……」
 熱っぽい口調で葵はつぶやいた。
 ぷちゅっ、ちゅくっ!
 カイトを貫いた指が抽送を開始した。
「うあっ! ああああ…………」
 熱くなっていた膣の中を掻き回されてカイトはめまいに近い快感に翻弄された。
(なんで……こんなことに……)
 葵を犯してるはずだったのに、いつのまにか攻守が逆転してカイトのほうが犯される立場になっていた。
 そのことがひどく不条理に思えた。
「お願い。気持ちよくなって。私に身を任せて」
「うああああっ……やぁ……んくぅっ……」
 体の裡で他人の一部が蠢く。その違和感がやがて快感になってくる。
 しかも葵は女の体がとろけるようなツボと手管を心得ていた。
 カイトはいとも簡単に翻弄された。
 いくら強がっても、しょせんカイトの肉体は女のものでしかない。指一本入れられただけで簡単に他人に支配されてしまう体だった。
 ちゅっく、ちゅっく……
 葵は微笑しながらカイトの中に埋めた指を出し入れさせた。その指は透明な粘液でどっぷりと濡れている。
 的確な刺激でカイトは目も眩むような快感を味わった。
 たちまちカイトは追い詰められていった。絶頂という名の崖っぷちへと。
 クスッと葵が笑った。
「カイト君、女の子初心者だね。たったこれだけで、喋れないほど良くなっちゃった?」
「な……あ……ひんっ、んんんんっ……」
「あは、可愛い。男の子はそんな喘ぎ方しないものね?」
「うあぁ……オレ……は……やぁぁぁっ!?」
 二本目の指を追加されてカイトは声をひきつらせた。
 ついさきほどまで、されるがままだった葵が別人のようにカイトを責める。
 葵の指を追い払おうと思っているのに、体は全く言うことを聞かない状態だった。
 逃れようもないまま、ただひたすら支配された。
 ちゅぽっ。
 卑猥な音を立てて指が引き抜かれた。
「ふわぁぁっ!?」
 引き抜き際にクリトリスを撫でられてカイトは悲鳴をあげていた。
 まだ目眩のような感覚の残るうちにカイトの胸のサラシがするするとほどかれてしまった。
 きつく押さえつけられていたバストが、それまでの虐待に抗議するように勢いよくシャツを押し上げた。
 それによってわずかに上体の重心が変わったほどだった。
 ピアスとチェーンの擦れるお馴染みの金属音がする。
 あっと思ったときには葵がカイトの前に回り込んでいた。
「オッパイあったほうが、もっと可愛いと思うの」
「言う……な……」
 葵がカイトの乳房を持ち上げ、手を離すと二つのふくらみが滑稽なほどにプルンプルンと揺れた。
 カイトはかばうように腕を持ち上げて胸を押さえた。すると、葵はイタズラな子供のように笑って再び指先を挿入してきた。
「はあああっ……」
 たった一本の指を挿れられただけでカイトの肉体はカイトのものでなくなってしまう。葵が膣の中で指を折り曲げると電撃のような快感が走って自然と身体がのけぞった。
「好きだよ、カイト君。だから、もっと気持ちよくなってね……そのカラダを受け入れられるくらい、気持ちよくね……」
「う……く……ああああンン……」
 葵の名前を呼ぼうとするのにカイトの口から飛び出すのは淫らな女の喘ぎ声だけだった。
(なんでオレ……こんなAVの女みたいな声を……)
 千々に乱れる思考の中で、残存する理性は己の痴態を恥辱に思っていた。
「楽にして。肉体の快楽に抗うのはツライだけだから。躰から自由な心なんてないんだよ」
 葵はカイトの唇を塞いだ。まるで反論を許さないとでもいうように。
 唇を割って舌が挿入ってくる。膣と唇と両方を犯されて、頭が白く染まっていった。
 痺れるような快感が心を縛っていく。
 考えることが困難になって、葵の言葉が自分の考えであるように心に染みこんでいく。
 自由な心なんてない……
 女という身体のセックスによって精神が規定されていく……
(イヤだ! オレはオンナじゃない……)
 パッと火花が散るように、カイトは強く反発した。だが、それも与え続けられる甘ったるい快楽に流されていく。
(あああ……キモチいいよぉ……)
 心の奥の部分が徐々に葵の愛撫を受け入れ始めた。女の悦びを拒む心の壁が一枚また一枚と崩れ去るたびに感じる快楽は大きくなっていく。
 花芯を挿し貫いた葵の指が激しく出入りした。
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
 カイトは目玉がこぼれそうなほどに目を見張った。唇が塞がれていなければ、あられもなく嬌声をあげてしまっただろう。
 ぬちゅっ、ちゅく、ぬぷっ……
 生々しい音の通りにぬめるような挿入の感触が下半身から伝わってくる。指が出し入れされるたびに躰の真芯から波紋状に快感が生み出された。
「んはぁっ」
 ようやく唇を解放されて、喘ぐように息を吸った。
「フフ……カイト君、とっても可愛い女の子の顔してる」
「ふぇ……ちが……」
「この女の子の躰はね、愛されるために出来てるんだよ。私と同じ」
 耳元で囁くように葵は続けた。その間も下半身への責めは止むことがない。
「エッチな本に載ってる女の人と同じにできてるの、カイト君のカラダ。カイト君だってあんなふうにエッチな姿になれる……」
「や、やぁぁぁ……ふぁぁぁ……」
 とろけたような声を返すのが精一杯だった。またぞろ激しくなってきた女性器への刺激にカイトはたまらず首を反らして快感をこらえた。
 いつのまにかシャツを胸の上までたくしあげられていた。裾の部分が胸のふくらみの上にのっかってそれ以上落ちなくなっている。
「……女の子のオッパイってキレイだよね。男の子はみんな好き。私も、好き……カイト君も好きでしょ?」
「ううン……ふぇ……す、好き……?」
「好きだよね? ね、自分のオッパイさわってみて」
 ぶらんと垂れ下がっていたカイトの手を取って葵はそれをカイトの乳房へと誘った。
「くぅン!?」
 尖って張り出した乳首が掌にコリリと押しつけられた。
 手と乳首の両方に不思議な感触を覚えた。勃ちきっていた乳首からは鋭いほどの快感が生まれた。
 自身の胸に手を当てて戸惑うカイトの姿を見て葵は嬉しそうに微笑んだ。
「もっと手を当ててみて」
「ん……」
 理性が半ば麻痺した状態のカイトは催眠にでもかかったように葵の言葉に従った。
 乳首を押し返すように胸のふくらみを手で押さえた。
 じわりと穏やかな快感。
 そして、心臓の鼓動が手に伝わってきた。トク、トクと早いビートを刻んでいる。
「オッパイを通じて感じるでしょ、カイト君のハート。もう男の子のものじゃないよ? だから、いまドキドキしてるカイト君の心も女の子の心だよ」
「オレは……オレ……」
「そう。男の子みたいな女の子。とってもエッチな、ね」
 エッチな女の子……
 葵の言葉が呪縛のようにカイトのこころを縛っていく。
 次第に、自分を男だと思うことができなくなっていく。
 ちゅんっ……
 ついばむように葵がカイトの胸の桜色の突起にくちづけた。
「アアン……」
 乳首から乳腺全体にジンと刺激が伝わりカイトを悶えさせた。
「女の子どうしで仲良くなるやりかた、教えてあげる」
 葵はカイトを優しい手つきで抱きしめた。
 男女の抱擁とはまったく違う、花びらが包むような女どうしの抱擁だった。
 葵の乳房がカイトのそれと重なり合った。
 お互いの乳房が押し合い、固くなった乳首がツンツンと突き刺さる。
「カイト君の乳首、生まれたばかりの子みたいにきれいなピンクだね」
 葵は体の位置を調節して、互いの乳首がぶつかり合うようにした。ピアスリングをおしのけるようにして葵の乳首がぶつかってきた。
「あっ、あっ、あっ……!!」
「あはは……くすぐったいね」
「ひゃあああっ……あ、あ、あンンッ!!!!」
 カイトにとってはくすぐったいどころではなく、強烈な性的快感だった。
 コリリとしこった乳首が互いに擦れるたびに胸から電気が走ったようになって、全身がひきつった。
 ピアスリングやチェーンのせいで不規則な刺激も加わる。
「〜〜〜〜〜……」
 唇の端から涎まで垂れてしまった。
 葵が体を揺すって乳首を合わせるたびにカイトは意味不明の叫びをあげて反応してしまう。我慢できるような生やさしい刺激ではなかった。
 葵も相当に感じてきているのか顔を真っ赤にして乳房を擦りつけてくる。
「こっちへおいでよ……」
「あ……お……い……」
「女の子になって。一緒にエッチな女の子になろう? そうしたら辛くないよ……」
 ぼうっと霞がかかった視界の中で葵の顔が近づき、もう一度濃厚なキスをされた。
 全身で重なり合う女同士のセックスは男であろうとするカイトの心をズフズブと溶かしていく。
(オレはもう……女なの……?)
(違う、オレは……)
(ああ……オッパイとオマンコがこんなにキモチいい……)
 葛藤する心の声が次第に断片的になって、そのぶんカイトの心と体はエクスタシーの高みに向かって運ばれていく。
 震える手で万年筆を拾ったのは殆ど無意識でのことだった。
「いこう……一緒だよ」
 葵が囁く。乳房がきつく押し合わされ、とけてひとつになったようだった。
 同時に膣への愛撫が大きく激しいストロークに変わった。
「あン……ハアッ……ンンン……ふあぁぁぁぁぁ……」
 雲を突き抜けるように意識が天上へと昇る。
「ゃあっ!?」
 カイトの嬌声にまざって葵が喘いだ。
 カイトの万年筆が葵の中に入っていったからだった。
 一矢を報いるように万年筆を葵の濡れた花弁の間に突き入れた。……それはカイトの最後の自由意志だった。
 すぐにペースを取り戻した葵が最後の愛撫をした。


 ………………………………………………………………
 サァァァァ……と光のカーテンが意識の断層を渡っていった。
 抗いようもないエクスタシーの白い悦びの中でカイトの全身は不随意にわなないた。
 自分が何を口走ったかも聞こえない。
 運び上げられた天上の窮みから虚空へと放り投げられた。
 体がどこに在るのかもわからなくなるほどのエクスタシーだった。
 そのまま無限の闇に吸い込まれるようにカイトの自我は形を無くした。
 ……葵にキスをされて意識が戻った。
 妙にすっきりとした意識でカイトは目を開いた。
 イッてしまったときカイトと葵は折り重なって布団に倒れ込んでいた。
「……気持ち、よかった?」
 葵は料理のできを気にするシェフのように真剣な顔をして尋ねてきた。
 カイトはつりこまれるように素直に肯いてしまった。
「良かったぁ!」
 葵は笑顔になってカイトの上から体を引いた。
 カイトは言葉も見つからないまま、ぐっしょり濡れているだろう股間へと手をやった。
「あ……」
 カイトの股間はすでに液を拭き取られてさらりとしていた。葵が後始末をしてくれたのだろう。
 秘部に手を当てたままカイトは温かなセックスの余韻にしばし浸った。
 股間のその場所にかつては男の象徴が存在していた……それがひどく昔のことに思える。
 いまカイトが実感できるのはひそやかに息づく雌の器官と子宮の存在だけだった。
 きっともう、ペニスの幻影をそこに感じることはないのだろう。漠然とカイトはそう思った。
 顔をあげて時計を見ると、すでに♂カイトが戻ってきてもおかしくない時間になっていた。
 葵はと見ると、もう身だしなみを整えてカイトのことをそばで見守っていた。
「また、気持ちいいことしようね」
 うん、と答えそうになってしまいカイトは言葉を呑み込んだ。
 裸の胸が葵に向けられていることに気付いてカイトはそれを腕で覆い隠した。
「……今日はもう時間がないんだ。早く帰ってくれ」
「うん、じゃあ帰るね……」
 葵は自ら部屋の敷居をまたいだ。そして戸口のところで振り返り、懇願するような口調でいった。
「私のこと、嫌いにならないで」
「……また来いよ」
 カイトはそう答えていた。葵はあきらかにほっとした顔になった。
 カイトは半裸で布団の上に腰を下ろしたまま、葵が玄関から出ていく気配を追った。
 足音が遠ざかっていく……
 葵にはもっと訊きたいことや、頼みたいことがあったはずだ。
「ふぅ」
 カイトはため息をつくとまじまじと自分の胸を見下ろした。金具で飾り付けられた胸のふくらみをそっと触ると、女同士で味わった夢のように甘ったるいセックスの心地よさが甦ってくる。
 ……かわいいよ、カイト君のオッパイ……
 葵の言葉が脳裡で響くと、不思議と自分の胸にあるふくらみを愛おしく感じられた。
 そのとき一階の柱時計が鳴ってカイトは我に返った。
「こんな格好、奴に見られたら……!」
 あわててカイトは階下に走り、メイド服に着替えた。私服でいることを咎められ、理不尽な罰でも受けたらたまらない。
 ヘア・タイをつけて鏡で仕上がりをチェックしているところへ♂カイトが帰ってきた。
 まさに間一髪のタイミングだった。
 ♂カイトに呼ばれ、出迎えに玄関に走る。
「ポチ、いい子で留守番してたかァ?」
 ♂カイトにぐりぐりと頭を撫でられる。
 カイトは無言でこくっと肯いた。
 葵を招き入れたことを告白するつもりなど、毛頭ない。
「……ん?」
「な、なに?」
 ♂カイトは怪訝な顔をしてカイトに顔を近づけてきた。
「なんか……甘い匂いがしないか?」
 鼻をひくつかせて♂カイトはいう。
 カイトの胸の中で心臓が跳ね上がった。
「気のせいかな? なんか甘くっていい匂いがしたような……」
 ♂カイトの鼻先がカイトの胸の谷間に押しつけられ、カイトは動悸の激しさを悟られないかヒヤヒヤした。
 葵とのセックスで分泌された体臭を、♂カイトは「甘い匂い」に感じているのである。
「ち、茶でも淹れてくる!」
「へえ。ポチも気がきくようになってきたね。頼むよ♪」
「お、おう……」
 カイトは逃げるように小走りで台所へと駆け込んだ。
 一人きりの台所でそうっとメイド服の胸元をはだけ、自分の匂いを嗅いでみた。
「あ……ほんとに甘い匂い……」
 かすかな温かみのある甘い香気がたちのぼっていた。
 不意に切なくなってカイトは胸を押さえた。
 これから自分はどこへいくのだろう、と漠然とした不安に苛まれながら……。



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