海原祐樹3

「ねえ…さん?」
 僕は、荒い息を吐き出しながら、何とか言葉をつむぐ。
「うふふ。凄いでしょ、男の子を女の子にする薬よ。実験的にお風呂に混ぜてみたんだけど、効果覿面ね」
 姉は、妖艶ともいえる笑みを浮かべながら言った。
 両親が死んで2人っきりになってから、ずっと僕を支えてくれた姉。
 その姉の、こんな表情を見るのは初めてだった。
「どうして、こんな…」
「あら、作った薬は実験してみなくちゃ効果がわからないでしょ?それに、今回のは特に、人間の男の子にしか効果がない薬だし。大丈夫よ、ちゃーんと戻れる薬を作ってあげるから」
 姉の言葉に、僕は少し安堵した。
 いくらなんでも、自分が可愛い女の子だなんていうのは違和感がある。戻れるに越した事は無い。
 だけど、そんな僕の気持ちを見透かしたように、姉は続けた。
「いい子にしてたら、ね」
「え…?」
「せっかく可愛い女の子なんだもの。可愛がってあげなきゃ損でしょ?」
「ね、姉さん」
 何を言ってるんだろう、この人は。
 一瞬、言葉の意味に気付く事を理性が拒絶した。
 そして、気付いた時には背後から抱きすくめられていた。
「抵抗しちゃ駄目よ?薬、作ってあげないからね」
「そ、そんな―ひぁっ!?」
 耳元でささやくそんな言葉にも、さっきの余韻で火照ったままの僕の体は、敏感に反応してしまう。
「うふっ。さっき一回イッたから、感じやすくなってるでしょう?」
「姉さん、もうやめてくれっ」
 恐かった。
 さっき自分をなぐさめた時の、自分が本当に心まで女の子になったような感覚が。
 あれ以上に感じてしまったら、もう戻れなくなってしまうような気がした。
「あら、嫌なの?でも、こっちはそうは言ってないみたいだけど?」
 けど、姉さんはそんな僕の考えなんてお構いなしに、腕の中の華奢な体を弄りまわす。
「あぁ…んふぅ…や、やだって…」
「ほら、ここはもうこんなに濡れてるくせに」
 くちゅ、くちゅ、と音を立てて指を操る。
「ひぁ…くぁう…ぁぁ…んふぅ…っぅあぁ……ぃやぁ」
 太ももをつたって、足首のあたりまで汗ではない液体が垂れ落ちる。
 膝ががくがくするけど、倒れることも許されない。
「ほら、見なさい。自分のいやらしい姿を」
 僕はあごを持ち上げられて、目をそむけていた姿身を見せられた。
 そこには、妖艶な女性に抱きすくめられながら快感に翻弄される、繊細な美少女の…僕の姿が映っていた。
「これが今の祐ちゃんよ。ふふ、いやらしい女の子でしょ?処女の癖にこんなに濡らして、可愛らしい胸もこんなに尖らせちゃって」
「ぁくぅっ!」
 鏡の中の姉が少女の乳首をつまみ上げると、その腕の中で少女が跳ね上がり、僕は喘いだ。
 体の中の火が、だんだん強くなっていく。その熱が、思考を霞ませる。
 もう、体が言う事を聞かない。
 声すらも、自由にならない。
 僕が女の子になった証とも言える、繊細で、悲痛で、気が狂いそうなほど淫らな喘ぎ声を、堪える事が出来ない。
 それでも、僕は男であった感覚を捨てきれず、鏡の中の少女の媚態も、喘ぎ声も、すべてが他人事のように感じていた。
 だから僕は全てを姉に身を任せて、思考するのを止めた。
「ふぁっ…あ、ぁあ…ひぁんっ……ぃあ…ひっ、ぁ、ぁ……」
「あら、素直になったのね。でも、駄目よ、自分から逃げちゃ」
 姉は、全てを見透かすような目で僕を抱きしめると、さらに激しい攻めを始めた。
 ささやかな、硝子細工のような少女の体を、姉の指先は容赦なく蹂躙していく。
 僕の正面のその少女は、目元を快楽によって真っ赤に染めて、ただの快楽人形と成り果てて、今まで到達した事のない高みに押し上げられようとしていた。
 あと一押しで、全てが終わるはずだった。
 けど、姉さんはその瞬間に全ての動きを止めて、僕から離れた。
「…ぇ…?」
 突然支えがなくなって、力の抜けきっていた体が崩れ、床に膝をついた。
 その衝撃で溢れ出した液体が床にシミを作り、広がっていく。
 僕は、ぼぅっとする頭をめぐらせて、姉さんの方を振り返った。
 停止したはずの思考が、再び動き出す。
 ナゼ、ツヅキヲシテクレナインダロウ。
 違う。
 ハヤクイキタイノニ。
 違う…。
 アトスコシダケダッタノニ。
 違う…ちがう…。
「うふふ。そんなに物欲しそうにして…でも駄目よ。今祐ちゃんは、感じてる女の子は自分じゃないって思い込もうとしたでしょ。そういうズルイ子は、イかせてあげない」
 嫣然と微笑む姉は、本当に楽しそうにそう言った。
「…っん…」
 ただ呆然とその声を聞いていた僕は、ふと下半身に生じた快感に身を震わせた。
 僕の両腕が、別の生き物のように蠢いて、秘所を弄っていた。
 キモチヨクナリタイ。
 キモチヨクナリタイ。
 キモチヨクナリタイ。
 頭の中が動物的な感覚で満たされていく。
「あらあら、我慢できなくなっちゃったのね。ホント、いやらしい娘ね。でも、それも駄目。それじゃあ本当に気持ちよくはなれないわよ?だから、オアズケ」
「くぁんっ…な、ぁに!?」
 僕は姉さんに両腕をバスタオルで縛り上げられて、タオルかけに縛り付けられてしまった。
 丁度両手は万歳するような形で、体はその下の壁にもたれかかってしりもちをついて座り込んだ。
 ぴぃん。姉さんの指が、僕の胸の先端を弾く。
「ひあっ!」
 それだけで、全身をしびれるような快感が駆け抜ける。
「可愛い胸。苛めたくなっちゃう」
 ぴん、ぴんぴぃん。ぴん。ぴんぴんぴぃん。連続して、不規則に続けられる感覚。
「ぁっ…んぁっ…ふぁぁっ…ひぁっ…」
 キモチイイケド、タリナイ。
 さっきまで全身を満たしていた燃えるような感覚に比べれば、それは随分と物足りなかった。
 そう感じた瞬間。
 ぴぃん!!今度は、秘所の尖りを弾かれた。
 電撃にも似た感覚が、僕の体を満たす。
 キモチイイ。
 コレガイイ。
「ふふふ。こっちはお気に入りみたいね。そんなにとろけた顔して」
「ひぃん!…あ、ぁああっ、くぅんっ!!」
 そして姉さんは、完全に顔を出したその尖りをつまむと、上下に擦り上げ始めた。
「…ぃ!!…ぁぁ…!! ーっ!!!」
 目の前に火花が散っている。
 体は不自由な状態から何度も何度も跳ね上がって、まともに息も出来ない。
 声にならない喘ぎが漏れる。
 そして、また高みへと到ろうとする瞬間。
「ふふ、オアズケ」
「ぁぁ…そんな…」
 あと少しで、最高の快楽が手に入るという瞬間に止められた僕は、思わずそんな事を口走ってしまった。
「そんな、なに?」
 姉は、相変わらず微笑みながら、僕の口元に耳を寄せる。
 だけど、言える訳がない。
 イかせて欲しいだなんて。
 イカセテホシイノニ。
「あら、まだがんばるのね。しかたないわね、そんなに嫌なら、やめてあげる。でもその前に、その汗拭いてあげるね」
 にっこりと微笑んだ姉は、僕の体をタオルで拭き始めた。
「…っん!」
 タオルが、僕の胸の先端を掠めていく。
 限界近くまで焦らされて、敏感になった体は、たったそれだけの刺激にも反応してしまう。
「ああ、ごめんね、うっかり手が滑っちゃったわ。あ、そうそう、ここもびしょびしょだから、拭いてあげるね」
「ぁ…っ…ぁぁっ…ぃ…ぁっ…―っ!!」
 僕の秘所は、タオルでごしごしと刺激されて…。
「駄目ね。きりがないわ。拭いてもすぐにまた濡れちゃうし」
 姉は唐突に、タオルを投げ出した。
 また、絶頂の直前で投げ出された。
 モットシテホシカッタ。
 もっとして欲しかった。
 我慢できなかった。
 理性も、矜持も、プライドも、頭の中から消え去った。
「もっと…して…」
 もう、止らなかった。
「うふふ、何を?」
 満面の笑みを浮かべて、姉は問う。
「いやらしいこと、気持ちいいこと…」
「そう。じゃあ、イかせてあげる。嫌って言うほど、ね」
 そう言った姉の表情は、契約に成功した悪魔みたいに見えた。
「でも、さんざん待たせた罰よ。最初はこれでイきなさい」
「ぁぁっ、そ、そんな…ぁのっ…ぃ、ぃあぁっ!」
 僕の股間は、姉の足に蹂躙されていた。
 爪で過敏な先端を突きながら、足でぐりぐりと踏みつける。
 完全に快楽に溺れた僕は、そんな屈辱的な行為でも、気持ちよければ何でも良かった。
「ホントに足でよがっちゃうなんて、祐ちゃんってマゾっ気もあったのね」
 僕を貶める姉の言葉も、今は気にならない。
「んぁぁっ!くぅんっ!も、もう…っ!!」
「イきなさい、祐ちゃん」
「んぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 とどめとばかりに尖りを足で捻られた僕は、全身を震わせながら、真っ白な世界へと沈んでいった。

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